世界一の悪法・治安維持法の犠牲者、故阿部正男さん

ーあらためて憲法を学ぶ 青山崇

民報藤島2016年10月23日第1071号



阿部正雄(あべまさお)
(1915(大正4)年~2002(平成14)年)

 先号(16日付)に「悪名高い治安維持法」と書いた。同号に齋藤留治さんが「お釈迦様も逮捕される?治安維持法」を書いている。成澤功さんが今年2月14日・21日付『民報藤島』「昭和も遠く」に書いた阿部正雄さんと治安維持法に関わってである。

 「現下の戦争は大本営発表や新聞報道とは違う」と口にしただけなのに逮捕。阿部さんは旧松嶺町の地主の家に生まれたが、小作人の生活から社会に疑問をもったという。その様子が、なに不自由ない裕福な家に生まれながら、社会の矛盾や人生の生き様に悩み出家したお釈迦様と似ていることからこんな題にしたという。

 阿部さんは鶴岡市に住み、西郷中にいたとき、指導した斎藤助夫君が「稲の一生」で毎日新聞賞を受賞した。彼は庄内農高に入学し私が担任することになった。その頃初めて会い「斎藤君は優秀だからよろしく頼む」と言われ、その後幾度かお会いしたが物静かな方であった。斉藤君は後に市議会副議長を務め引退した。

 さて治安維持法は、天皇制などを否定する思想や団体を取締まり、改定や拡大解釈を繰り返し、自由主義や反戦的言動も標的にし、最高刑が死刑という世界に例のない悪法である。

 作家小林多喜二の拷問死など、成澤さんが書いているように1600人の死者が出た。

 成澤功さんは、阿部さんについて詳しく書かれ、最期を「治安維持法という最悪の国法がもたらした悲劇と、関係した人々のその後の人生です。」と結んでいる。


JCP鶴岡地区委員会HPへ