合踰【ごうゆ】

「上! 御注意を!」
「え?」
 振り仰いだ陽子の眼に、赤い仄かな光が映った。
「ゴウユが」
月の影 影の海(上), p.66
図1 合踰図1 合踰∗6

 妖魔の一。作中での登場は、蓬莱から渡ってきた陽子たちが空中を移動しているときに、伏兵として現れた場面のみ。襲撃に気付いた驃騎が名前を口にしているが陽子には知識がなく、後の話題にも上っていないので、作中では漢字表記が判らない。また、陽子は驃騎がゴウユと呼んだ妖魔の姿をはっきりと視認できなかったため、その容貌も不明である。∗1
 一方アニメでは、同じシーンにおいて後方・前方・上方から挟撃を仕掛けるゴウユの姿が描かれている∗2。また、公式アニメガイドでは「合踰」との漢字表記があり、巨体を誇る猪型の妖魔であるとの説明がある∗3
 ここから、原作中において、同シーンの終盤に驃騎の背から落下した陽子が目にした「突進してくる猪に似た獣」∗4が合踰であると考えられる。

 明確な言及はないものの、妖魔による一連の襲撃が塙王の指示によるものであるため、塙麟の使令の中に合踰がいて、その使令が同族を呼び集めて陽子を襲ったと考えられる。なおアニメ脚本集には、合踰について「塙麟の使令」であると明確な記述がある。∗5

 初出は『月の影 影の海(上)』p.66 , l.7。

∗1
月の影 影の海 (上) , p.66

∗2
アニメ『十二国記』第2話

∗3
十二国記 公式アニメガイド , p.131

∗4
月の影 影の海 (上) , p.69

∗5
十二国記 アニメ脚本集 (1) , p.5

∗6
アニメ『十二国記』第2話 および 同アニメDVD第4巻冊子「『月の影 影の海』妖魔紹介Ⅱ」をもとに描画した。


 『山海経』の東山経によると∗7剡山に合窳∗8という獣がいる。
 猪のような姿をしており、身体は黄色で、赤い尾を持つ。人面で、声は嬰児に似ている。人を食べ、虫や蛇を食べる。合窳が現れると天下に洪水が起こるという。

∗7
山海経 中国古代の神話世界 , p.76

∗8
二文字目が穴冠に瓜を2つ並べた字だが、音は合踰と同じく「ゴウユ」と読む。


 アニメだと牛型にしか見えない合踰ですが、猪型です。アニメ脚本集にも公式アニメガイドにも「猪型」って明記されてますし、小説にも「猪に似た獣」ってあります。合踰は猪型です。
 イタチ兄は「でも牛にしか見えないよね?」って言ってますが、合踰は猪型です!
 イタチ弟も「牛じゃね?」って思ってますが、合踰は猪型です!