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強迫症/強迫性障害ひとりでできる認知行動療法で改善回復を目指す

目次

強迫性障害ひとりでできる精神療法は認知行動療法の心理教育に加え、実践治療法として不安階層・暴露反応妨害法・行動実験を中心としたワークで症状の改善や回復が期待できます。

認知行動療法

認知行動療法

これまで恐れたり避けたりしていた状況に敢えてさらす(暴露)方法と不安や不快感を打ち消すために行ってきた強迫行為をできるだけしない(反応妨害法)の両方を行う「暴露反応妨害法」が効果的となります。

強迫観念によって生じる不安や恐怖などに正面から向き合い、強迫行為をせずに我慢することで、少しずつ症状に慣れていくのを促す治療法です。不快な感覚を避けるために行われていた強迫行為の必要がないことが理解でき、自身だけで継続ができる場合が多いので改善効果は長く続きます。

また、マインドフルネスとして、嫌な感情(恐怖、不安、嫌悪、不全感)、二次的感情(怒り、悲しみ、恥)をそのままずっと観察できることも大切となります。 暴露反応妨害法の組み合わせとして、自分が心配していることや想像していることが本当に起こるのか実験してみる「行動実験」も有効ですが、暴露の効果を下げてしまいます。ただし、暴露のハードルを下げることにもつながりますので、症状次第だと考えます。


 行動実験は認知の再構成として下図のように制止学習も行えます。

ひとりでできる認知行動療法

強迫障害の症状、強迫観念、強迫行為、回避、巻き込みなどについては既に学びました。
心理教育も大半は終わっています。
ここからは、残りの心理教育とひとりでできる認知行動療法のワーク(実践治療法)を行っていきます。

症状の記載・記録ワーク

症状発現状況の記載

症状はどんな状況(先行刺激)で心配(強迫観念)し、どんな行動や思考(強迫行為)なのか書き出してみます。

症状発現の記載例

状況(先行刺激)心配(強迫観念)行動や思考(強迫行為)
トイレ手に付着した菌によって病気になると想像手を過剰に洗う
食材食材の汚れが料理することで病気になると想像食材を過剰に洗う
調理手の汚れが料理することで病気になると想像手を過剰に洗う
荷物を部屋に入れた時荷物についていた汚れが部屋で拡散し、病気になると想像荷物を消毒する
帰宅した時洋服や身体についていた汚れが部屋で拡散し病気になると想像洋服はすぐ洗濯機で数回洗濯
し、身体はシャワーを長時間浴びる

避けている行動・過剰な強迫行為(何度も、時間を掛けてしている)など

不潔・汚染恐怖、洗浄恐怖

避けている(回避)状況過剰な強迫行為の行動(何度も、時間を掛けてしている)
調理(食材の汚れなど)食材を洗う、容器、食器などアルコールペーパー使用
食事後の食器洗いなど唾液などを気にするため何度も食器を洗う
飲食店のテーブル、食器、店員の手など清潔を信用していない、できるだけアルコールするか箸やフォークの持ち込み、店員の触った部分は食べないなど
食材の買い物手袋を何度も替える
ゴミ出しの準備何度も手を洗う、新しい袋を重ねる
下着や洋服の汚染何度も洗濯する、洗濯籠や洗濯機の清掃、アルコールスプレー使用
人を家に招き入れる、人の家に行くできる限り招かない、行かない、部屋に入った場合は、とにかく消毒、人の触ったものを暗記する(玄関からトイレから廊下、ソファーなどや触ったものすべて)
トイレのドアノブを触るなどアルコールスプレー、手を洗う、開けてもらう、トイレに肌を付けないようにする、済ませた後はシャワーを浴びる
外出から帰ったとき玄関で洋服を脱ぐ、ゴミ袋に入れる、手洗い、うがいを何度もしてシャワーを浴びる
お金やススマホに触る手袋をする、基本はスマホのみ使用
電車のつり革一切触れない、手袋着用

一日の生活活動記録

一日の流れと症状の出現について記録します。強迫行為に至った行動と回避行動と過剰な強迫行動と思われる状況を1週間以上で記録をし明らかにします。

一日の生活記録表                                                                                

時刻 強迫行動に至った行動、または回避行動過剰な強迫行動を記載します。何を何回、何分と書きます。また、回避行動については、回避しているだけか、巻き込みをしているかの内容を書きます
6:00起床・身支度トイレの前に便器の消毒2回、トイレ後手洗い20分間、そして消毒、トイレのドアノブ消毒後、開けたドアは足で閉める。
6:30
 
23:30 就寝の準備 手洗い、ドアノブ・スマフォなど起床時に触るものの消毒、ベット―カバーを初めて外す、シーツ、タオルケット、枕カバーなど交換

不安階層

100点:最も強い不安や不快感が起こりうる刺激(物、状況、動作)
0点:全く不安や不快感が起こらない刺激

先ずは、100の刺激を決めて、それを基準にその他の刺激を記入していきます。

不安階層表記載例(不潔恐怖・洗浄強迫の場合)

不安の 強い順場面(状況)不安の強さ10~100点
公衆トイレの便座を使う100
電車のつり革を握る95
お店の商品を触る・駅やコンビニのごみ箱に触れる90
床に落ちたボールペンをそのまま使う85
お金の釣りやレシートをもらう80
自販機やエレベーターのボタンを押す75
外のドアなどに触れる70
自宅のトイレを使う65
買った食材をそのまま冷蔵庫に60
10台所の生ごみ用のごみ箱を触る・ゴミ出しの準備をする50
11家族共有のリモコンを操作する40
12自宅のトイレの壁やドアに触れる30

悪循環シート

暴露反応妨害法の理解

強迫症で行う治療法は、曝露法と反応妨害法を組み合わせた曝露反応妨害法で行います。

・曝露反応妨害法とは、暴露療法の恐れていたものにあえて立ち向かい、反応妨害法の不安を下げるために行ってきたことを敢えてせずに済ませるということになります。
要するに「不安が現れても、時間が経てば慣れ、不安感は徐々に下がってくる」という事を体験してもらう治療法です。
不潔恐怖トイレの便器やつり革など、汚いと思うものを触った後で手を洗わない方法です。これは床に落ちたものを手で触られないも同じで目に見えない菌や汚れが気になるからです。
洗浄強迫トイレの後に手を洗わない方法です。これは尿や便で手が汚れていると思うからです。
確認強迫部屋を出るのが心配でも一人で外出する計画を立て、鍵を閉める音を確かめた後には、2回目以降のドアの鍵を確かめない方法などです。
加害恐怖車を運転していることに様々な怖い事などを確認したいと頭に浮かびますが、気になるたびに確認するとか、人をひいていないかなどの恐怖の確認をしない方法です。
不完全恐怖・完全強迫本などの文字を読んで万全を期する、あるいは完璧を目指したい気持ちが強く、頭に入ったような気がしないなどの不安がでても先に進む方法です。
縁起強迫不吉な文字や新聞の記事、ニュースを見ると、嫌なイメージが浮かぶために『頭の中で良いイメージの字に置き換えてしまいますが、置き換えずそのまま読み突き進み続ける方法です。

暴露反応妨害法のイメージ図

グラフの縦軸は、不安の程度を表しています。強迫や苦手なものに直面した不安の強さは直面し続けることによって弱くなります。これがハビチュエーション、要するに慣れていくということです。曝露反応妨害法によって、苦手なことに直面し続けると、少なくても1時間から2時間で必ず不安は下がります。

セッション間ハビチュエーション図のように、暴露反応妨害法を繰り返すと不安が徐々に下がっていくだけでなく、不安が治まるまでの時間も短くなっていきます。続けていくと、強迫、苦手なことに直面しても不安の感じかたが弱くなり強迫行為をしなくても不安が減り、強迫観念が起こることが減っていきます。
ただし、曝露反応妨害法を行っていても、頭の中で確認、打消しをするメンタルチェッキングをしていると症状が悪化してしまいます。

メンタルチェッキング

暴露妨害法を行った後に出現しやすい、確認行為のイメージを反復する強迫行為です。例えば、トイレ後に「しっかりと手を洗えたのだろうか」との強迫観念が出現した際に、【しかっりと手が洗えている記憶の想起】することで精神的強迫行為で不安を低減することです。この繰り返しが症状を悪化させたり、治療の停滞、再発を起こすことになります。

暴露反応妨害法の効果時間
不安に直面しながらも儀式を行わない療法です。数回で効果の出る人がいる中で、一方では不快感しか残らない人もいるようです。
ただし、ある研究では暴露反応妨害法の効果が出るまで20時間が必要であったという結果もあります。何度も取り組むのに勇気が必要な方でも、20時間は頑張ってみるという目標をもつことです。
強迫観念はそのままで大丈夫
強迫観念は頭の中に侵入してきます。自分と闘い説得させようとしても、気を紛らわせようとしても強迫観念は収まるどころか強固になってきます。
強迫観念を消そうとするとか、抵抗しようとするのはやめて、行為の時間が作られないように自分の行動を変えることです。それが最終的には強迫行為が抑えられたに繋がればいいのです。きっと魔法のように時間とともに馴化してきます。
強迫障害の敵は暇な時間
強迫障害は暇な時間を狙っています。強迫行為に費やせる時間があればあるほど行為をしてしまいます。趣味や仕事、人との交流などで暇な時間を極力少なくしてください。

ハビチュエーション行動分析・行動実験

一時的に不安が上がっても時間とともに下がる現象を体験することを意図として行います。
ひとつのセッション内でこのように不安が下がる現象をセッション内ハビチュエーションと称し、セッションを繰り返すごとに不安の強度が下がっていく現象をセッション間ハビチュエーションと称されています。
有効な暴露反応妨害法を行うためには、この2つのハビチュエーションを体験することが不可欠となります。

暴露反応妨害法は不安階層のSUDS「80点(%)」からはじめる「80」ルールがあります。
このSUDS「80」ルールで臨むことで効果がわかりやすく、行動実験に自信が持てるようになります。ただし、大きな負担を感じてしまうケースもあり、次からの暴露を拒むこともあります。そのため、無理なく始められる中程度「50」から開始し、徐々により苦痛を伴う状況「100」へと練習します。
技法は「80」と同じですが、行動分析に加え、行動実験中にハビチュエーションの推移記録を取る「モニター技法」を行うとさらに効果の期待ができます。

実際の行動実験の技法を行います。不安階層の50点から行動を選び、実験を分析していきます。

考えの検証(行動分析)例:台所の生ごみ用のごみ箱を触る・ゴミ出しの準備をする/不安階層50点

先行刺激:台所の生ごみ用のごみ箱を触る・ゴミ出しの準備をする
強迫観念:雑菌やウイルスなどが付着していて病気になるのではないか
強迫行為:手を過剰に洗う
強迫行為をすることで、どのような長所があるのか
病気になるのを防ぐことができる。
強迫行為をすることで、どのような短所があるのか
毎回、多大な時間を奪われる。
他の人が同じ状況なら、どうすると思うか
手は一度洗って終了。
強迫行為をしないことで、どのような悪いことがあるのか
病気になってしまい、人に移すのではないか。
⑤、④を考える、行うことの根拠(科学的には)は何か
根拠では病気にならないかもしれないが、触った後の手が間違って口に触れたら病気になるかもしれない。
⑥、⑤の根拠の正解は
無菌室でない限り、ウイルスは空気中に存在している。雑菌なども無限にあらゆる箇所に付着しているが、たいていの場合は触れても、口にしても病気にならない。
強迫症になる以前は、どのようにしていたか
石鹸で1回の手洗いか、もしくは水洗いだけだったのかもしれない
もし、友人や知り合いが同じ立場になったら、何と言ってあげたいか
1回の手洗いで大丈夫だよ。根拠もあるから安心してね。
心の健康/厚生労働省・強迫障害 認知行動療法マニュアルより
スクロールできます
経過時間SUDS点数
不安や不快感の程度
0~100最強 の点数をつける
その時の行動を詳しく記載する。
(例:電話した➡母に電話して不安が消えないと話して、母からは大丈夫時間を過ごしなさいと言われたなど)
開始時間 開始直後(14:00)
50
台所の生ごみ用のごみ箱を整理し、手に触れゴミ出しの準備をしてゴミ出しをした
10分後50公園に着く
20分後50 公園を散歩する
30分後35 ストレッチをする
1時間後50 用意して持参したお茶を飲み、おやつを食べた
1時間30分後20 気を紛らすために音楽を聴きながら雑誌を読む
2時間後10 公園近くの商店街を散歩した。

➡時間と不安度の推移グラフの記入(モニター)でハビチュエーションを知る
前もって時間と不安度の推移グラフのフレームを作っておき、同行者がいる時や一人の取り組み時にモニターをして推移の記入(メモ帳に時間と不安度を書くだけでも良い)を行います。
※曝露反応妨害の行動実験中に記入することで「今」現実の状態や不安度を目視できることからも前進しやすい技法です。

行動実験

不潔恐怖・洗浄強迫の例 暴露:ゴミ出しをする 反応妨害:手を洗わずそのままで近所の公園を散歩し、その手で飲食をする

経過時間不安や不快の程度
0(全くない)~100(最強)の点数をつける
その時やっていたこと
例:じっと座っていた、外を歩いていた、親に大丈夫かと聞いた、手を洗ってしまったなど
開始時間
開始直後
10分後
20分後
30分後
1時間後
2時間後
感想

反省
生ごみを触り手を洗わずに外に出るということは、手を洗いをしたいという強迫観念があらわれ、不快さは50点レベルでしたが、その後家を出て体を動かしていたら少し楽になった。SUDSは35点でしたが、おやつを食べるとなると手の汚れの手洗いをしたいという強迫観念がよみがえり、不安が上昇してSUDSは50点にもどる。病気の心配もよぎりましたが、音楽を聴くことによって一気に点数は20点に下降。2時間後には余裕が出て商店街の散歩もできて、明日の予定も考えられた。

強迫性障害の認知行動療法ワークはセラピーによるアドバイスが効果的であるため、治療用ワークブックは3時間無料カウンセリング希望者のみに無料で配布していますので、web上での認知行動療法ワークの詳しい内容は省略させていただいる箇所があります。

参考web

心の健康/厚生労働省・強迫障害 認知行動療法マニュアルより
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113840.pdf

参考文献

精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン/医学書院

標準精神医学 編集:尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院

精神療法の基本 支持から認知行動療法まで:堀越勝・野村敏明/医学書院

カプラン 臨床医学テキスト:監修井上令一/メディカルサイエンスインターナショナル

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎・大野裕監修/医学書院標準精神 尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院

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