「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」 https://tfm-plus.gsj.mobi/news/btmCTxPpMQ.html。今回の漢字は「裕福」「余裕」の「裕(ユウ)」。「ゆたか」という訓読みももつ漢字です。



「裕」という漢字はころもへん(衤)に「谷」という字を書きます。

ころもへんは、和服の襟元を合わせた形を描いた象形文字です。

古代中国において「衣」は、霊が依りつくもの。

例えば、生まれたばかりの赤ん坊に着せる衣には、その子を守るために、祖先の霊を乗り移らせたといわれています。

一方の「谷(たに・コク)」という字も象形文字。

谷の入り口の様子を描いたもので、上半分の「八」という漢数字と屋根のような部分が、谷を囲む山脈(やまなみ)の重なる様子を表しているといいます。

また、この「八」の字を、山の水が流れる様子と見る説もあります。

その下の「口」は、空の箱のような形で谷の窪地を表し、山からの水を受け入れる場所、つまりは湖などのことをさすのでしょう。

ころもへんは、私たちの心をなぐさめるよい霊が依りついたもの。

「谷」は、山の清らかな水をたたえた場所。

そのふたつの文字を合わせた漢字「裕」は、「ゆとりのある」「ゆたかに満たされた」という意味をもつようになりました。

また、いにしえの人々にとっての幸せの基準は、「衣・食・住」それぞれが満ち足りているか、ということ。

綿を入れたり丈を長くしたり、重ね着をしたり。

衣服に手をかけられる、ということは「ゆたか」であることのしるしなのです。

山の頂きから見下ろす、冬晴れの谷間。

清流の音が、遠く絶え間なく聞こえてきます。

水は、澄みきった鏡のごとき湖へと流れこみ、風は水面にさざ波を残し、天空へと帰って光輝いています。

その谷は、神々が好んで舞い降りる場所。

いつでも心地よい「気」に満ちあふれ、そこにたたずむ者を、やさしく包み込むのです。

ではここで、もう一度「裕」という字を感じてみてください。

仕事、家事、育児に介護。

あちらこちらへ移動して、誰かと会ったり、趣味にいそしんだり。

私たちは時間を切り刻み、様々な名前をつけて用事を組み込んで暮らしています。

でも、ほんとうに欲しかったのは、自分と向き合う名もない時間。

心の奥底に広がる静かな谷間の湖に立ち、清らかな「気」の流れに身を任せる、豊かなひとときです。

はて、今年の私……、そんな余裕があったかしら。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『人名の漢字語源辞典』(加納喜光/著 東京堂出版)

12月29日(土)の放送では「猪」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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