JP4633262B2 - 心的外傷後ストレス障害、強迫性障害および関連する神経精神医学的障害の処置 - Google Patents
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Description
(優先権の情報)
本出願は、共有に係る米国特許第09/006,641号(1998年1月13日に出願)の一部係属出願であり、その内容全体は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、神経精神医学的な障害(例えば、不安障害、精神病障害、気分障害、および身体表現性障害)についての新規の薬物処置に関する。これらの処置は、反復性の、常同性(streotype)の、未所望の、侵入性(intrusive)のまたは不随意性の思考、知覚、または行動によって特徴付けられる障害の症状を軽減する。これらとしては、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、身体化障害、心気症および身体醜形障害が挙げられる。これらの状態に対する現代の薬物療法は、有効性において制限されており、ここで多くの患者は、処置にもかかわらず症状を有し続ける。抗うつ薬、気分安定剤、抗不安薬、および抗精神病薬は全て、それらを処置するために使用されている。それらがいくらかの軽減を提供する場合でさえ、持続性の侵入性の反復性の精神的な現象は、窮迫している症状としてのままであり得る。従って、心的外傷後ストレス障害を患うヒトが、抗不安薬で処置される場合、気分は改善し得るが、外傷事象の「フラッシュバック」は継続する。
【0003】
明らかに、これらの障害の処置に有効なさらなる投薬法についての、および特に、これらの障害に特徴的な、再発性の未所望の、侵入性のまたは不随意性の思考、知覚および行動を抑制または排除する投薬法についての必要性が存在する。このような投薬法はまた、症状が別の精神医学的症候群の一部(例えば、うつ病または精神分裂病)として生じる場合にか、あるいは症状が神経学的障害(例えば、トゥレット症候群またはハンティングトン病)に付帯する場合に、このような症状を低減するために使用され得る。
【0004】
本発明者は、新規な処置が有用である原型状態を総説することによって着手する。
【0005】
(心的外傷後ストレス障害(PTSD))
(PTSDの説明)
心的外傷後ストレス障害は、以下の特徴によって特徴付けられる、破局的な事象に対する即時応答または遅延応答である:
「外傷の再経験、精神的無感覚(psychic numbing)または外傷に伴う刺激の回避、および覚醒の増大。再経験する現象としては、外傷の残留に対する、侵入性の記憶、フラッシュバック、悪夢、および精神学的または生理学的な窮迫が挙げられる。侵入性の記憶は、外傷事象の自発的な未所望の窮迫している追憶である。反復性の悪夢としては、外傷の主題または実際の事象の高度に正確かつ詳細な再想像が挙げられる。フラッシュバックは、事象の構成要素が軽減され、そしてヒトが数秒間の事象を何日にもわたって経験しているかのうように感じる解離性状態である。外傷関連刺激に対する反応性は、患者が外傷事象の間に存在した視野、音、匂い、または事象に曝される場合に、パニック発作の強度の感情的窮迫または身体的症状と類似するものを含み得る。回避としては、外傷の残留である思考、感覚、状況または活動が挙げられ得る。無感覚は、健忘症、感情的な解離、影響の拘束(restricted affect)または活動における興味の喪失を通じて起こり得る。覚醒の増大としては、不眠症、被刺激性、過剰覚性(hypervigilance)、驚愕応答の増大、または集中障害が挙げられ得る。この障害は、個体の個人間での行動および個体の寿命の全ての範囲(sphere)に対する広汎な効果を有し得る」(Chamey DSら:Neurobiological mechanisms of human anxiety.Fogel BS,Schiffer RB,Rao SM:Neuropsychiatry.Baltimore:Williams & Wilkins,1996,257〜286頁)。
【0006】
(PTSDの疫学)
ベトナム戦争のアメリカの退役軍人のうち、PTSDの寿命有病率は、男性31%および女性27%と見積もられ;現在の有病率の見積もりは、それぞれ、15%および8.5%であった。女性の犯罪被害者の調査において、PTSDの寿命有病率は、13%であり、そして現在の有病率は、3%であった。全体的に、PTSDは、米国国民のうち2%以上が罹患している(Charneyら、前出)。労働に関連する傷害を患うヒトのうち、PTSDの割合は、部分的なPTSD症候群を患うヒトを含める場合には、3分の1または2分の1さえ超え得る(Asmundson GJら:Posttraumatic stress disorder and work−related injury.J Anxiety Disord,12:57〜69、1998年1月〜2月)。明らかに、PTSDは、公衆衛生上の重大な問題である。
【0007】
(合併症および共存症)
PTSDと物質乱用、特にアルコール症との間には強い関連が存在する(Coffey SFら:Screening for PTSD in substance abuse sample:psychometric properties of a modified version of the PTSD Symptom Scale Self−Report.J Trauma Stress,11:393〜9,1998年4月)。さらに、慢性PTSDは、広範な範囲の慢性疾患の長期のヒトでの危険性を増大し得る。重篤な戦闘関連ストレスに曝されたヒトの長期の追跡は、PTSDが循環系、消化器系、および呼吸系の障害、ならびに感染疾患、およびPTSD以外の神経学的および精神学的障害の発症リスクを有意に増大することを示した(Boscarino JA:Diseases among men 20 years after exposure to severe stress:implications for clinical research and medical care.Psychosom.Med.59:605〜14,1997年11月〜12月)。
【0008】
過去十年間にわたる種々の研究は、急性の外傷事象後のPTSDの発症についてのリスク因子を同定した。これらとしては、知能の低さ、外傷事象の体験が発達していないこと、外傷のかつての病歴、および外傷後の医学的試験の機会での急な心拍数が挙げられる。ヒトが、主要な外傷事象の後に急性のストレス障害を発症する(すなわち、PTSDの症状に似ている症状をすぐに示す)場合、その個体は、症状を有し続けて、そして最終的には、PTSDという診断が保障される。これらを考慮すると、PTSDに対する高リスクの集団が同定され得ることが暗示される。PTSDの症状を有意かつ特異的に低減する非毒性薬物が存在する場合、これは、PTSDの発症を予防するために、この高リスク集団で使用され得る。
【0009】
(PTSDの病態生理学)
PTSDの病態生理学は、ストレスに対する反応に関する脳系(視床下部−下垂体−副腎の軸を含む)、およびノルエピネフリン、セロトニン、内因性オピエート(opiate)、およびベンゾジアゼピンレセプターに対する内因性リガンドに関与する系における障害に関与する。PTSDは、ノルアドレナリン作動性覚醒系の過剰活動(ここで視床下部−下垂体−副腎の軸では相対的に低い活動である)に関与する(Henry JP:Psychological and Physiological Responses to stress:the right hemisphere and the hypothalamo−pituitary−adrenal axis、an inquiry into problems of human bonding.Acta Physiol Scand Suppl,640:10〜25,1997)。一方、内因性オピエート機構の活動低下は、PTSDの症状に寄与し得る(Baker DGら:Cerebrospinal fluid and plasma beta−endorphin in combat veterans with post−traumatic stress disorder.Psychoneuroendocrinology,22:517〜29,1997年10月)。
【0010】
動物実験は、NMDAレセプター媒介プロセスが、ストレス事象後の不安様行動の確立に関与するようであることを示唆する。この後者は扁桃内の接続、および扁桃とその遠心性のもの(efferent)との間に影響する長期増強(long−term potentiation)(LTP)を誘導する。自然な推論は、NMDAレセプター媒介プロセスが、ヒトでのPTSDの発症に関与しているということである(Adamec R:Transmitter systems involved in neural plasticity underlying increased anxiety and defense:implications for understanding anxiety following traumatic stress.Neurosciece and Biobehavioral reviews 21(6):755〜65,1997)。最近の総説において、2人のイスラエル研究者は、心的外傷後ストレス障害、ならびに精神分裂病、アルコール症および大うつ病におけるNMDAレセプターの中心的な役割を記載した。彼らは、NMDA機能を調節する薬剤が、これらの障害の全ての処置に有用であることを提起した(Heresco−Levy U,Javitt DC:The role of N−metyl−D−aspartate(NMDA)receptor−mediated neurotransmission in the pathophysiology and therapeutics of psychiatric syndromes.Eur Neuropsychophamacol 1998年5月;8(2):141〜52)。しかし、彼らは、PTSDの処置におけるアカムプロサート(acamprosate)も、これらの障害の処置におけるNMDAレセプターおよびGABA−Aレセプター作用の組合せも、提起しなかった。
【0011】
扁桃およびその接続に加えて、PTSDは、尾状核の機能不全に関与する。Luceyら(1997)は、SPECT研究において、PTSDの症状が、尾状の血流と負に相関し、ここで右側で相関性がより強いことを示した(Lucey JVら:Brain blood flow in anxiety disorders OCD,panic disorder with agoraphobia,and post−traumatic stress disorder on 99mTcHMPAO single photon emission tomography(SPET).Br J Psychiatry,171:346〜50,1997年10月)。
【0012】
PTSDの病態生理学におけるGABAの役割は、決定されていない。ベンゾジアゼピンは、PTSDに伴う不安を軽減し得る。しかし、それらは、通常、この障害の特定の症状についてはそれほど効かない。外傷の生存者の研究において、外傷後の抗力価のベンゾジアゼピンの早期投与は、生理学的覚醒を低減する(例えば、心拍数を安静にする)場合でさえも、PTSDの発症を予防しなかった。(Gelpin Eら:Treatment of recent trauma survivors with benzodiazepines:a prospective study.J.Clin Psychiatry,57:390〜4,1996年9月)。さらに、ベンゾジアゼピンアンタゴニストのフルマゼニルは、PTSDを患う患者におけるPTSDの症状の不安の増大を生じなかった(Randall PKら:Effects of the benzodiazepine antagonist flumazenil in PTSD.Biol.Psych 38(5):319〜24,1995)。
【0013】
(PTSDの薬物処置)
PTSDの薬物処置は、限定された成功を有する。この見解は驚くべきことではなく、広範な範囲の投薬法が、試みられている。個々の患者は、種々の薬物から利益を享受しているが、標準的な処置としては、出現していない。おそらく、最も予測可能な利益は、抗不安薬および抗うつ薬での顕著な不安およびうつ病の処置、ならびに抗精神薬での精神症状の処置から生じる。これらの処置は、被害を軽減し、そして機能を改善し得るが、一般に、侵入性の思考および心象、過剰な覚醒ならびに感情的な無感覚の中心的な症状を変更しない。
【0014】
PTSDを有する個々の患者に役立つ医薬のクラスとしては、いくつかの名称をあげるために、ベンゾジアゼピン、ドパミンアンタゴニスト(神経弛緩薬)、特異的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、三環系抗欝剤、抗癲癇薬(AED)、リチウム、βアドレナリン作動性遮断薬、およびクロニジン(α2−アドレナリン作動性アゴニスト)が挙げられる。シプロヘプタジン(セロトニンレセプター遮断薬)は、PTSDを有する患者において悪夢の抑制について効力を示している(Gupta S.ら;Efficacy of cyproheptadine for nightmares associated with posttraumatic stress disorder.Compr Psychiatry、39:160−4、1998 5〜6月)。最近、リスペリドン(非定型神経弛緩薬)は、完全ではなかったが、PTSDを有する子供および成人において侵入性精神的現象を抑制することが示された(Horrigan J.、presentation at the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry annual meeting、1998年10月;Psychiatric News、1998年12月18日で報告)。
【0015】
「処置」および「心的外傷後ストレス障害」に関するフルテキスト特許検索により、13の関連特許が得られた(米国特許第5,028,612号;第4,962,128号;第5,484,794号;第5,488,056号;第5,574,028号;第5,574,029号;第5,574,053号;第5,708,014号;第5,726,193号;第5,763,457号;第5,776,969号;第5,852,036号;第5,852,037号)が、そのどれもが、グルタメートまたはGABA関連機構を扱っていない。NMDA−グルタメート神経伝達に影響する化学物質に関するいくつかの特許は、それらの化学物質で潜在的に処置可能な精神医学的障害の長いリスト中で、PTSDを含む。しかし、これまでに、ヒトにおけるPTSDの処置として、特定のグルタメートアンタゴニストは試験されていない。特に、PTSDの処置において、NMDAレセプターアンタゴニストおよびGABA−Aアゴニストの組み合わせ、またはNMDAアンタゴニスト−GABA−Aアゴニスト作用の組み合わせを伴う薬物の使用を示唆または報告する文献はない。
【0016】
ある最近の刊行物は、「病態生理学におけるNMDAレセプター媒介神経伝達の役割および精神医学的症候群の治療薬」を概説する(Heresco−Levy U,Javitt、DC、European Neuropsychopharmacology 8(1998):L 141−152)。著者らは、扁桃に注入されたNMDAアンタゴニストが、増強された驚愕応答の獲得をブロックし得ることを記述し、そしてグルタメート依存性の長期の増強が、条件性恐怖の発達および心的外傷記憶のコード化に重要であり得ると推測している。しかし、彼らは、NMDAレセプター媒介神経伝達のエンハンサーがPTSDにおける治療効果を有することを示唆している。彼らは、NMDA神経伝達のアップレギュレーターがまた、PTSDと関連した認識欠陥を取り消すかまたは予防し得ると、続けて述べている。
【0017】
過剰なNMDA−グルタメート神経伝達が特定の場合の大うつ病の根底にあり得ることが提唱されているが、Heresco−LevyおよびJavittはまた、精神分裂病は低グルタメート状態(hypoglutamatergic)であるという仮説を記載している。D−シクロセリン(NMDAレセプター上のグリシン部位に結合する混合アゴニスト−アンタゴニスト)が、両状態のための処置として進められている。この概説および他の概説(ここには列挙しない)から、NMDA−グルタメート神経伝達の異常が、精神医学的症状および症候群と関連していること、およびNMDA−グルタメート神経伝達の種々のモジュレーターが、精神的障害における治療用途の候補であることが明らかである。しかし、入手可能な文献は、NMDAアンタゴニストがPTSD、OCD、または他の神経精神医学的障害の一部として生じ得る反復思考、知覚、および行動のための治療薬であることを提唱していない。これら文献は、NMDAアンタゴニズムをGABA−Aアゴニズムと組み合わせる薬剤での処置に関して、全体的に触れていない。
【0018】
要約すると、PTSDは、有意な病的状態および頻繁な合併症(これは、身体的疾病および物質乱用を包含する)を有する一般的な障害である。利用可能な薬物処置は、効力において制限される。PTSDの確立におけるグルタメートおよびNMDAレセプターの役割が動物モデルによって示唆されているが、ヒト患者におけるPTSDの処置として、特定のNMDAレセプターアンタゴニストは報告されていない。PTSDを処置するために、許容できない毒性を伴うことなく障害の特定の症状の緩和を提供し得る、さらなる薬物の必要性が存在する。有効な薬物処置は、PTSDを処置するだけでなく、ストレス後まもなくに与えられた場合、PTSDを予防し得る。
【0019】
(強迫性障害)
(OCDの説明)
強迫性障害(OCD)は、顕著な窮迫をもたらすのに十分な再発性の強迫観念または強迫行為によって特徴付けられる不安障害である。これらの挙動は、多大な時間を必要とするか、または個人の正常な機能、社会活動、または関係に有意に干渉する。強迫観念は、心に入り込み、そして存続しつづける、侵入性の、かつ歓迎されない、再発性の観念、思考、像、または衝動である。この思考を無視もしくは抑制するか、またはいくらかの他の思考もしくは行動で中和する試みがなされる。個体は、それらを彼または彼女自身の心の産物として認識する。強迫行為は、強迫観念に応じてなされる反復性の、目的のある挙動であり、そしてこれは、不快なまたはいくらか恐れられる事象または状況を中和するか、または予防するように設計される。しかし、この活動は過剰であるか、または予防されるように設計されるものと現実的に連結しない。影響された個人は、彼または彼女の挙動が不合理であることを認識している。(Robertson MM、Yakely J:Gilles de la Tourette syndrome and obsessive−compulsive disorder.Fogel BS、Schiffer RB、Rao SM;Neuropsychiatry、Baltimore:Williams & Wilkins、1996、827〜870頁)。
【0020】
(OCDの疫学)
米国におけるOCDの生涯有病率の概算値は、1.9%〜3.2%の範囲であった。より軽度の形態の強迫性障害は、さらにより一般的である。通常の一生の中でOCDを発症する生涯危険率は、5.4%であると概算される(Bland RC、Newman SC、Orn H:Epidemiology of psychiatric disorders in Edmonton.Acta Psychiatr Scand 77(補遺):338、1988)。この障害は、通常、慢性であり、患者の約3分の1のみが自然寛解を有する(RobertsonおよびYakely、上述)。
【0021】
(OCDの病態生理学)
近年、OCDは、眼窩前頭皮質、前帯状部(anterior cingulate region)、尾状核、および視床を包含する神経回路における過剰な活動に起因すると考えられている。これらの回路における再発性活動は、特徴的な再発性の常同性の強迫観念および強迫行為を生じる。OCDのこの局在は、多数の脳画像化研究によって支持されており、これらの研究は、異なる方法論および重複した結果を伴った(Saxenaら:Neuroimaging and frontal−subcortical circuitry in obsessive−compulsive disorder. Br J Psychiatry Suppl 1998;(35)26−37)。Saxenaおよび共同研究者は、直接的な線条体−淡蒼球経路、対、間接的な線条体−淡蒼球経路(striato−pallidal pathway)における緊張の不均衡に起因する、眼窩前頭皮質下回路の機能亢進を仮定している。神経精神医学的試験はまた、眼窩前頭構造およびそれらの皮質下連結の機能不全を示唆する(Schmidtke Kら:Cognitive frontal lobe dysfunction in obsessive−compulsive disorder.Biol Psychiatry、43:666−73、1998年5月1日;Purcell Rら:Cognitive deficits in obsessive−compulsive disorder on tests of frontal−striatal function.Biol Psychiatry、43:666−73、1998年5月1日)。
【0022】
神経伝達因子機能の見地から、最も広い科学的コンセンサスは、OCDにおけるセロトニン作動系の機能不全についての役割を支持する。(RobertsonおよびYakely、上述)。最も重要なのは、セロトニン再取り込みインヒビター(SRI)がこの障害の最も一貫して有効な薬物処置であるという所見である。さらに、研究は、OCD患者とコントロールとの間のセロトニン作動性伝達における差異を示した。多くのなかの1つの例として、OCDを有する患者は、正常コントロールよりも、d−フェンフルラミンチャレンジ後のプロラクチンの増加が少ない。(d−フェンフルラミンはSRIである)。さらに、プロラクチン応答が鈍磨である患者ほど、OCDの症状がより悪くなる傾向にある(Moriteleoneら:Prolactin response to d−fenfluramine in obsessive−compulsive patients,and outcome of fluvoxamine treatment.Br J Psychiatry 170:554−7、1997年6月)。
【0023】
ドパミンもまた、OCDの症状を生じる際に役割を有し得る。直接的ドパミンアゴニストおよび間接的ドパミンアゴニスト(レボドパおよびアンフェタミンを含む)は、動物において常同性の「儀礼的」挙動を生じ得、そしてOCDの強迫的挙動に似た反復行動を生じることが示されている(RobertsonおよびYakely、上述)。ドパミンアンタゴニストがSRIの治療効果を増強することができることは、症状の生成に関与するシナプスでのドパミン作動性機能亢進の仮説と矛盾しない。
【0024】
より最近の研究は、OCD症状の生成におけるグルタメートの役割、およびおそらく、GABAの欠損についての付随する役割を示唆した。Mooreら(J.Am Acad.Child Adolesc.Psychiatry、1998年6月、37(6):663−667)は、パロキセチン(paroxetine)(特異的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI))での処置の成功の前後にPET走査によって研究された、OCDを有する9歳の少年の事例を報告する。彼らは、尾状核領域においてグルタメート共鳴の大きな変化を見出した。彼らは、セロトニン−グルタメート相互作用が、OCDの病態生理学に関与すると推察した。OCDを包含する不安障害を有する患者のリンパ球膜におけるベンゾジアゼピンレセプターの研究では、OCDを有する患者は、正常コントロールよりも25%少ないベンゾジアゼピン結合部位を有した(Rocca Pら:Peripheral−type benzodiazepine receptors in anxiety disorders. Acta Psychiatrica Scandinavica 84:6:537−544、1991年12月)。この発見は、GABAが関連した阻害が、他の不安障害においてと同様に、OCDを有する患者では欠損し得ることを示唆する。
【0025】
(OCDの薬物処置)
SRI(すなわち、SSRI+クロミプラミン(優勢セロトニン再取り込み阻害を伴う三環系抗欝剤)は、OCDのための薬物処置の主流である。しかし、OCDを有する全ての患者がSRIに応答するわけではなく、いくらかはSRIを耐容せず、そして多くは、部分的な応答のみを有する。(Rasmussen SA、Eisen JL;Treatment strategies for chronic and refractory obsessive−compulsive disorder. J Clin Psychiatry、58 補遺 13:9−13、1997)。1997年の概説では、Henrietta Leonnardは、「全身試験におけるSRI/SSRIに対する増強剤として有意な改善を示した薬剤は、クロナゼパムおよひハロペリドールのみである」と記述している(Leonard H:New developments in the treatment of obsessive−compulsive disorder.J Clin Psychiatry、58 補遺 14:39−45;考察46−7、1997)。クロナゼパムは、セロトニン作動性伝達に対する効果を有するGABA−Aアゴニストであり;ハロペリドールは、ドパミンレセプター遮断薬である。他のセカンドラインのまたは増強剤(支持する証拠はやや弱いが)としては、他のドパミンアンタゴニスト、リチウム、クロニジン(α2−アドレナリン作動性アゴニスト)、モノアミンオキシダーゼインヒビター(MAOI)、ブスピロン(セロトニン1Aアゴニスト)、およびセロトニン作動性伝達に影響する種々の他の薬物が挙げられる。ドパミンアンタゴニストは、チックの個人または家族病歴を有する患者においてSSRIに対するOCDの応答を増強するのに、より有用であり得る(McDougle CJ:Update on pharmacologic management of OCD:agents and augmentation。J Clin Psychiatry、58 補遺 12:11−7、1997)。
【0026】
(身体表現性障害:身体化障害、転換性障害、心気症および身体醜形障害)
(身体表現性障害の説明)
身体表現性障害は、生理学的説明が知られていない身体症状により特徴付けられる状態であり、そして心理的作用により生じると推定される。「身体表現性障害の一般的特徴は、全身的医学状態(そのため、用語、身体的(somatoform)という)を示唆する生理的症状の存在であり、そして全身的医学状態、物質の直接的効果、または別の精神障害(例えば、恐慌性障害)によっては完全に説明されない。」(American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fourth Edition.Washington,DC,American Psychiatric Association,1994)。身体表現性障害は、多数の症候群に分けられる;それについての完全な正式の診断基準は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(American Psychiatric Association,前出)に見出され得る。本出願に対して関連している3つの障害では反復性の、未所望の、常同性の思考(この場合、身体的症状に対する思考)が顕著である:
1)身体化障害は、30歳前に発現し、6ヶ月より長期間にわたる慢性状態であり、明白な全身的医学的原因のない多くの身体的愁訴により特徴付けられる。これには、いくつかの異なる器官系を含み、そして4つの疼痛症状、2つの胃腸症状、いつの性的症状および1つの神経学的症状を含む。
2)転換性障害:明白な全身的な医学的原因または神経学的原因を伴わない、説明できない感覚的愁訴または運動性愁訴。愁訴は、心理学的因子に関連するとして臨床家により評価される。
3)心気症は、重篤な疾患を有するという不安への病的な没頭であるか、または重篤な疾患をすでに有しているという思い込みである。これは、身体症状の誤った解釈を伴い、そしてその個体がすでに冒されている疾患を除外する理学的検査および臨床検査からの証拠を有する。この不安または思い込みは、ここ6ヶ月以上の苦痛および/または機能的障害をもたらし、そして医学的な評価および保証により救済されない。
4)身体醜形障害は、外見における想像上の欠陥に対する病的な没頭、または実際はわずかな外見的異常に対して極度に不釣合いな関心である。これはしばしば、強迫性の行動(例えば、皮膚をつつくこと、確認のため何度も探すこと(reassurance seeking)、および鏡をチエックすること)と関連する(Phillips KA:Body dysmorphic disorder:diagnosis and treatment of imagined ugliness.J.Clin Psychiatry,57 Suppl 80:61〜4)。
【0027】
(身体表現性障害の疫学)
有病率の見積もりは、研究される集団によって変化する。明らかに、この障害は、一般的集団よりも臨床サンプルにおいてより発症率が高い。しかし、一般的集団においてさえ、有病率はかなり大きい。最近の2〜3の研究はこのことを示している。
1)イタリア、フィレンツェの2つの近郊において通常の開業医により実行された地域研究において、著者らは、以下の1年有病率のデータを報告した:身体表現性障害が0.7%、転換性障害が0.3%、心気症が4.5%、そして身体醜形障害が0.7%(Faravelli Cら、Epidemiology of somatoform disorders:a community survey in Florence.Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol,32(1):24〜29 1997 Jan)。
2)2つの地方の初期医療における身体表現性障害の有病率は、11.1%であった(Philbrick JTら、:The prevalence of metal disorders in rural office practice.J Gen Intern Med,11(1):9〜15 1996 Jan)。
3)ロサンゼルス在住の中国系アメリカ人社会の調査によって、Diagnostic and Stastical Manual of Mental Disordersに特定されたのではないが、分離症候群として広く認識されている身体表現性障害である「神経衰弱症」の3.6%の有病率が示された。神経衰弱は、心気症および身体化障害と共通の特徴を有する。注目すべきは、これらの個体は、彼らの身体症状の原因として不安障害または抑うつを除外するようにスクリーニングされていたことである。
【0028】
(PTSDと身体化の関連)
身体表現性障害(PTSDのような)は、反復性で未所望で扱いにくいまたは不随意性の常同性の思考、認識および行動を含む。この類似性に加えて、PTSD、身体化および解離(dissociation)が、同じ患者において頻繁に一緒に生じる。外傷性の経験を被った500例以上の個体の研究において、、PTSD、解離、身体化および情動調節不全(affect dysregulation)は、非常に相関関係がある(van der Kolk BAら:Dissociation,somatization,and affect dysregulation:the complexity of adaptation of trauma.Am J Psychiatry,153(7補遺):83〜93 1996 Jul)。著者は、「PTSD、解離、身体化、および情動調節不全は、外傷に対する適合のスペクトルを示す。それらは、しばしば、一緒に生じるが、外傷を負った個体は、経時的に種々の症状の組み合わせに苦しむだろう。」と結論した。苦痛、最も極度なストレスの犠牲者は、頻繁に身体化およびPTSDの組み合わせを発症する(Priebe S;Esmaili S;Long−term mental sequelae of torture in Iran−who seeks treatment? J Nerv Ment Dis、185(2):74〜7 1997 Feb)。
【0029】
(身体表現性障害の病態生理学)
驚くべきことに、概して、身体表現性障害における局所の脳機能についての研究はほとんど存在しなかった。しかし、臨床疼痛および実験的疼痛において、局所の脳機能に対しては、PETスキャンニングおよび機能的MRI(functional MRI:fMRI)のような技術を用いて、多くの研究が存在する。同様に、身体表現性障害の神経化学についてよりも疼痛についての神経化学の方がよく知られている。疼痛の研究は、身体表現性障害の処置に関するアイデアの価値のある供給源である。しかし、明らかに、鎮痛薬は、それ自体では身体表現性障害についての処置ではなく、また身体表現性障害についての処置に鎮痛薬が必要というわけでもない。体性知覚に関する精神的苦痛が、疼痛およびここで言及される身体表現性障害の共通の特徴であるということは重要な関連である。身体化障害における精神的苦痛を構成する生理的な機構は、疼痛知覚の(純粋に感覚的局面に対立して)精神的局面に関連する辺縁系核および通路に関与するようである。以下の節では、本発明に関する疼痛伝達についてのいくつかの因子を要約する。
【0030】
(GABA、グルタメートおよび疼痛)
いくつかの型の身体表現性障害を有する患者は、疼痛を経験する。脊髄における疼痛伝達および調節は、GABAおよびグルタメートにより強力に影響される。NMDA−レセプターが媒介するプロセスは、疼痛に対する過剰過敏性の状態の発達に関与する。「脊髄における増幅系(例えば、NMDAレセプター)に関与する情報は、有痛性応答が刺激に常に適合しているわけではないことの理由および仕組みを理解するのに向かうステップである。このような事象は、海馬における長期増強作用(LTP)のような他の可塑性の事象と平行である。」(Dickson AHら、:The pharmacology of excitatory and inhibitory amino acid−mediated events in transmission and modulation of pain in the spinal cord.Gen Pharmacol,28(5):633〜8 1997 May)。最終的に、NMDA媒介増幅およびGABA媒介減弱の均衡(バランス)は、脊髄から脳へ伝達される疼痛シグナルの強度を決定する。Dicksonら(前出)は、炎症性状態において、GABA活性の増大がグルタメート活性の増大を相殺するが、神経障害性の疼痛の場合はそうではないということを観察した。これは、神経障害性の疼痛が、組織傷害および炎症に起因する疼痛よりもより耐えがたいかもしれないという臨床的観察と一致する。
【0031】
脊髄刺激を臨床的に用いて、例えば、ガン由来の難治性の疼痛を緩和する。動物モデルでは、脊髄刺激の効果は、後角でのグルタメートおよびアスパルテートの放出を減じること、ならびにGABAの放出を増大することである(Cui JGら、:Spinal cord stimulation attenuates augmented dorsal horn release of excitatory amino acids in mononeuropathy via a GABAergic mechanism.Pain,73(1):87〜95 1997 Oct.)。これは、(NMDAレセプターの近傍において)GABAが多くグルタメートが少ないほど、鎮痛に関連するというアイデアを支持する。後角ニューロンの自発的な活動は、NMDAレセプター依存性機構を介して、GABAにより抑制され、そしてグルタメートにより増大される。GABA放出の増強は、経皮的電気的神経刺激(TENS)の鎮痛の利点を部分的に説明する。ネコのモデルにおいて、末梢神経の電気刺激の鎮痛効果は、GABA−Aアンタゴニストであるピクロトキシンにより部分的にブロックされる−このことは、GABA−A媒介成分を示唆する(Jeong Yら、:Effects of iontophoretically applied naloxone,picrotoxin and strychine on dorsal horn neuron activities treated with high frequency conditioning stimulation in cats.Yonsei Med J,36(4):336〜47 1995 Sep)。
【0032】
脳および脊髄に関与する同様の研究に基いて、脳および脊髄に対する傷害に起因する中枢の疼痛は、グルタメート作動性の機構およびGABA作動性の機構の組み合わせに由来している。
【0033】
「最近の証拠により、中枢の疼痛、すなわち、中枢系の傷害による疼痛は、感覚視床と感覚皮質領域との間の混乱した神経伝達に起因し得ることが示唆される。中枢の疼痛は、グルタメート神経伝達に反対するかまたはGABA作動性神経伝達を増強するかのいずれかにより制御され得る。GABA作動性阻害の視床レベルおよび皮質レベルの両方での相対的な低機能が、それらの同じ領域において区分的に興奮性の高緊張(hypertonus)を導くことが推測される。2つの混合が、各患者を特徴付けるはずである。中枢の疼痛に対する薬理学的分析のアプローチは、処置を最適化すべきであるという条件下では、現在まで、世界的に乏しい。」(Canavero S;Bonicalzi V:The neurochemistry of central pain:evidence from clinical studies,hypothesis and therapeutic implications.Pain,74(2〜3):109〜14 1998 Feb)。
【0034】
(身体表現性障害の薬物処置)
身体表現性障害の間で、身体醜形障害は、最も確立された薬物処置であるSRIを有する(Phillips、前出;Phillips KAら:Efficacy and safety of fluvoxamine in body dysmorphic disorder.J Clin Psychiatry、59(4):165〜71 1998 Apr;Perugi Gら;Fluvoxamine in the treatment of body dysmorphic disorder(dysmorphophobia)Int Clin Psychopharmacol,11(4):247〜54 1996 Dec)。OCD(これも、多くの場合、SRIに反応する)に対する類似性の観点から、これはおそらく、驚くべきことではない。Phillipsは、ブスピロンまたは神経遮断薬での増強が、OCDにおいてと同様に、身体醜形障害において有益であり得ることを指摘している。しかし、上記に示された研究者らは、処置された患者の約2/3しか、SRIでは改善されなかったと記述している。
【0035】
他の身体表現性障害について、様々な種類の抗うつ薬が最も頻繁に使用される。これらは、しばしば、患者が同時的な大うつ病または気分変調を有するため、保証されるが、これらは体性鬱病が明白な鬱病を伴わない場合に明らかに作用し得る。「仮面鬱病」または「抑鬱病等価物」の概念は、これらの応答を説明するために数十年間使用されてきた(Downes−Grainger Eら:Clinical factors associated with short−term changes in outcome of patients with somatized mental disorder in primary care、Psychol Med、28(3):703〜11、1998年5月)。
【0036】
患者の身体症状および心配事が妄想的均衡に達する場合、この患者は、神経弛緩薬から解放され得る。もちろん、これらは、遅発性ジスキネジーのような問題のある長期の副作用を有する。
【0037】
何人かの患者は、鎮痛剤またはベンゾジアゼピンにより身体症状および心配事から過渡的に解放され得る。あいにく、耐性が生じる。処方薬依存性または乱用が生じ得る。
【0038】
身体醜形障害のためのSRIの使用は、有意な進歩を示し、従って、症状を拡大する多くの患者は、たとえその患者らが顕著な鬱病を示さなくても、抗鬱薬により利益を受けるということが認識される。それにもかかわらず、全ての患者がこれらの処置に応答するわけではない。身体化障害、転換性障害、および心気症について、現在までの薬物処置はほとんど満足のいくものではなかった。
【0039】
(発明の背景)
要約すると、PTSD、OCDおよび4つの身体表現性障害(身体化障害、転換性障害、心気症、および身体醜形障害)は、一般大衆の実質的部分の有意な窮迫および障害を生じる、集中的な繰返しの相同的な思考、知覚および行動によって特徴付けられる。広範に有効かつ耐性の薬物処置は、これらの神経心理学的障害を患っている患者の処置応答を有意に改善する。さらに、これは精神薬理学的において、抗鬱薬、抗不安薬、気分安定薬(例えば、バルプロ酸リチウム)および睡眠薬とは異なる、意味のある新しい処置選択肢を与える。従って、これは、これらの確立されたクラスの向精神薬のいずれかを用いる処置に対する患者の部分的な応答の残余症状を処置する新規の方法を与える。
【0040】
(発明の要旨)
本発明は、以下を処置するための方法を、これらの症状が、反復性の未所望な、扱いにくいかまたは不随意性の常同性の思考、知覚または行動を含む場合はいつも提供する:(1)神経精神医学的障害(例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(OCD)、および身体表現性障害)(これらについて、この方法は特徴的な症状を軽減し得る);ならびに(2)他の神経精神医学的障害の症状(例えば、精神分裂病、大うつ病および双極性障害)。より一般的には、本発明は、任意の神経精神医学的障害(任意の不安障害、精神障害、気分の障害または身体表現性障害を含む)を処置するための方法を提供する。
【0041】
1つの局面において、本発明は、薬理学的薬剤を投与することによって、神経精神医学的障害を処置するための方法を提供し、これは、(i)GABA−Aレセプターにおいてアゴニストとして直接的または間接的に作用し、かつ(ii)直接的か、間接的かまたは調節性のメカニズムによってNMDA型グルタメート神経伝達を減少する。特定の例には、N−アセチルホモタウリン酸カルシウム(アカムプロサート)、N−アセチルホモタウリン酸マグネシウム、N−アセチルホモタウリン酸の他の塩、GABAおよびNMDA型グルタメート神経伝達に対して類似の薬力学的効果を有するN−アセチルホモタウリン酸の誘導体、および肝臓、血液または脳において代謝されて、類似の薬力学的効果を有するN−アセチルホモタウリン酸または誘導体を生じる、プロドラッグが挙げられる。別の局面において、本発明は、GABA−A神経伝達を増加しそしてNMDA型グルタメート神経伝達を減少するように作用する1つ以上の薬理学的薬剤を組み合わせて投与することによって、神経精神医学的障害を処置するための方法を提供する。
【0042】
本発明はまた、メマンチン、マグネシウム、または非競争的NMDAレセプターアゴニストを、アカムプロサート、もしくは別の化合物、またはそれらの混合物(特に、前段落で列挙されたものを含む)(これは、同時に、NMDA型レセプターにおけるグルタメートに対するシナプス後応答を減少し、そしてGABA−A伝達を直接的または間接的に増加する)と組み合わせることによって、神経心理学敵将外を処置するための方法を提供する。好ましい実施形態において、マグネシウムが、非競争的NMDAレセプターアンタゴニストとして使用される。あるいは、GABA−Aアゴニストは、NMDAアンタゴニスト活性およびGABA−Aアゴニスト活性の両方を有する化合物と組み合わされ得る。
【0043】
他の好ましい実施形態において、本発明は、マグネシウムが、神経精神医学的障害(不安障害(例えば、心的外傷後ストレス障害および強迫性障害)、身体表現性障害、気分の障害、精神障害、および未所望の、扱いにくい、または不随意性である、再発性の常同性の思考、知覚または行動を伴う他の障害を含む)を処置するために使用される薬理学的薬剤の効果を増強し得ることを記載する。NMDAグルタメート神経伝達を同時に減少し、そしてGABA−A神経伝達を増強するように作用するマグネシウムおよび薬理学的薬剤の相乗活性は、運動障害の処置において以前に示されている。(これは、同時係属出願第09/193,892号(これは本明細書中で参考として援用される)に詳述される)。従って、本発明において、マグネシウムは、NMDAグルタメート神経伝達を同時に減少し、そしてGABA−A神経伝達を増強して、神経精神医学的障害を処置するように作用する薬理学適薬剤と組み合わされる。
【0044】
他の実施形態において、NMDAレセプターアンタゴニストとして作用する薬剤と、GABA−A神経伝達を促進する(GABA−Aレセプターアゴニストを作用することによって、GABA−A放出を増加することによって、シナプスからのGABAの再取込みを阻害することによって、またはGABA−Aレセプター刺激に対するシナプス後応答を増加することによって)1つ以上の薬剤との任意の組み合わせ(マグネシウムを含むかまたは含まない)は、神経精神医学的障害の処置のために使用され得る。
【0045】
NMDA型グルタメートレセプターアンタゴニスト、GABAアゴニストおよびマグネシウムとして作用する丸剤複合剤は、この併用治療剤の送達のための特定のビヒクルとして提案される。さらに、他の経口調製物が提案され;混合物がシロップ、エリキシル、または時間性放出カプセルの形態で送達され得る。後者は、この混合物の用量の作用の持続時間を延長するための1つの方法として提案される。
【0046】
最後の実施形態において、極度のストレスに曝された個体におけるPTSDの発症を予防するために、NMDAアンタゴニズム活性およびGABA−Aアゴニズム活性の両方を有する薬剤または薬剤の組合せが使用される。あるいは、急性ストレス反応の症状が継続することまたはPTSDに発展することを予防するために、NMDAアンタゴニズムおよびGABA−Aアゴニズムを組合せた組成物が使用される。これらの薬剤を、極度のストレスの後か、または心的外傷後ストレス障害の合併症としての物質乱用(例えば、アルコール症)の発症を予防するために使用することが特に好ましい。
【0047】
(定義)
「有効な」:用量を参照して本明細書中で使用される場合「有効な」とは、神経精神医学的障害の症状を発現する個々の患者に対してあつらえられた、許容できる副作用を伴って、任意の付随する症状において減少または改善を生じるに充分な、薬理学的に活性な薬剤の特定量を投与することをいう。経験的には、1日あたり3〜4回333mgから666mgの範囲で投与されるアカムプロサートの用量が有効である。投与される薬学的薬剤の最適用量が、1つ1つの個体で変化するということを、当業者は理解する。個々の患者における投薬量は、患者の身長、体重、問題の薬物の吸収速度および代謝速度、および処置される障害の段階、ならびに同時に投与される他の薬理学的薬剤が何かということを考慮されるべきである。
【0048】
「非毒性」:本明細書中で使用される場合、「非毒性」とは、一定の用量の問題の薬物の投与であって、ここで組成物中の活性成分が、その薬物を投与される患者に許容できないか、または投薬の継続の禁忌と医師により判断される副作用を生じない投与をいう。
【0049】
「アカムプロサート」:本明細書中で使用される場合、「アカムプロサート」とは、カルシウムN−アセチルホモタウリネート(N−acetylhomotaurinate)をいう。これら2つの用語は交換可能に使用され得る。「N−アセチルホモタウリネート」および「アセチルホモタウリネート」は、交換可能に使用される。
【0050】
「アカムプロサートおよび関連化合物」:「アカムプロサートおよび関連化合物」とは、以下をいう:カルシウムアセチルホモタウリネート、マグネシウムアセチルホモタウリネート、N−アセチルホモタウリネートの他の塩、およびアセチルホモタウリン塩基、ならびにGABA−A型およびNMDA型のグルタメート神経伝達に関して同様の薬力学的活性を有する、ホモタウリンまたはアセチルホモタウリンの誘導体、ならびに血液、肝臓、または脳において代謝されて、アセチルホモタウリネートまたはGABA−A型およびNMDA型のグルタメート伝達に関して同様の薬力学的活性を有する誘導体を与えるプロドラッグ。アカムプロサートは、NMDAレセプターにおいてグルタメートにより刺激されたニューロンの細胞内応答を減少し、そして少なくとも部分的には、シナプス前部のGABA−B阻害性自己レセプター(autoreceptor)に対するアンタゴニスト効果により、GABA−A伝達を増強する。表現の簡便さのために、本明細書中で使用される場合以下のような類義としてみなされるべき種々の用語により、アカムプロサートおよびCNS薬力学を有する同様の化合物をいう:「GABAアゴニストおよびNMDAアンタゴニスト」、「GABA−AアゴニストおよびNMDA−アンタゴニスト」「GABA伝達を増大させる薬剤およびNMDA型グルタメート伝達を減少させる薬剤」、「GABAアゴニストおよびグルタメートアンタゴニスト」および「GABA伝達のアップレギュレーターおよびNMDA型グルタメート伝達のダウンレギュレーター」。
【0051】
「GABA−A伝達」:「GABA−A伝達」とは、GABAによるGABA−Aレセプターの活性化に関連する薬力学的現象をいう。GABA−A伝達の増強は、GABAの放出の増大、その代謝の減少、シナプスからのGABAの再取りこみの減少、レセプター結合の増大、またはレセプター結合の細胞効果の増大を包含し得る。
【0052】
「GABA−Aレセプターアゴニスト」:「GABA−Aレセプターアゴニスト」とは、本明細書中で使用される場合、(上記で定義されるような)GABA−A伝達を増強し得る分子をいう。
【0053】
「NMDAレセプターアンタゴニスト」:本明細書中で使用される場合、「NMDAレセプターアンタゴニスト」とは、グルタメートに対するNMDA型グルタメートレセプターのシナプス後応答を阻害するかまたは減少させる任意の分子である。
【0054】
「NMDA型グルタメート神経伝達」:「NMDA型グルタメート神経伝達」は、シナプス前に、レセプター結合部位において、イオンチャネル内で、細胞膜内で、またはニューロン内部のいずれで作用しようとも、NMDAグルタメート伝達を減少させる任意のものを広く参照するために、本明細書中で使用される。これには、NMDAレセプターを有するシナプスにおいてグルタメート放出を減少するか、NMDAレセプターに対するグルタメートの結合を変更するか、またはNMDAレセプターの数を変更する任意のものを含む。
【0055】
「神経精神医学的障害」:本明細書中で使用される場合、「神経精神医学的障害」とは、「精神的障害」または「精神医学的障害」と同義で使用され、用語「神経精神医学障害」は、当該分野で公知である以下を含む:任意の不安障害(例えば、パニック発作、広場恐怖症、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、特異恐怖症(Specific Phobia)、社会恐怖症(Social Phobia)、強迫性(Obsssive−Compulsive)障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、全般的医療状態(General Medical Condition)に起因する不安障害、および物質誘導性不安障害ならびに他に特定されない不安障害)、任意の精神病的障害(例えば、精神分裂病、分裂病様障害、分裂感情性障害、妄想性障害、短期精神病性障害、共有精神病障害、全般的医療状態に起因する精神病性障害、および物質誘導性精神病性障害ならびに他に特定されない精神病性障害)および任意の気分障害(大うつ性障害、気分変調性障害、他に特定されない抑うつ性障害、I型双極性障害、II型双極性障害、循環病、全般的医療状態に起因する気分障害、物質誘導性気分障害および他に特定されない気分障害)。「神経精神医学的障害」は、任意の神経学的疾患または精神的障害を参照するために本明細書中で使用され、これらの疾患または障害において、主な症状は反復した未所望か、侵入性か、または不随意で常同性の、思考、知覚、または行動の発生である。これらの障害の例示的な症状としては、具体的には、強迫観念、疾患の恐怖についての反すう思考、心的外傷後「フラッシュバック」、身体的疾患の非存在下での再発性の痛みの経験、強迫行為、およびチックが挙げられる。特徴としてこのような症状を伴う特に好ましい精神的障害としては、強迫性障害(OCD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、心気症、疼痛障害、および身体化障害が挙げられる。このような症状を有し得る他の好ましい精神的障害としては、精神分裂病、大うつ病、および双極性障害が挙げられるがこれらに限定されない。このような症状により特徴付けられる神経学的障害としては、チック、ジル・ド・ラ・ツレット症候群(TS)、および焦点失調症(focal dystonia)が挙げられ;このような症状を有し得る他の神経学的障害としては、ハンティングトン病が挙げられる。
【0056】
「心的外傷後ストレス障害」:用語「心的外傷後ストレス障害」または「PTSD」は、破局的出来事に対する即座の反応または遅れた反応を特徴とする不安障害を記載するために本明細書中で使用される場合、外傷、精神病性無感覚、または外傷に付随する刺激の回避を再び体験すること、および増加した覚醒を特徴とする。再体験の現象としては、外傷を思い出させるものに対する、集約的な記憶、フラッシュバック、悪夢、および心理学的および生理学的な苦痛が挙げられる。このような反応は、不安を生じ、そして患者の生活の質ならびに身体的および感情的な健康に対して、慢性的および急性の両方の有意な衝撃を有し得る。
【0057】
「強迫性障害」:「強迫性障害」または「OCD」は、個体に著しい苦痛を引き起こすに十分な、再発性の強迫観念または強迫行為を特徴とする不安障害である。これらは多大な時間を必要とする、すなわちこれらは個人の通常の機能、社会活動、または関係を有意に阻害する。強迫観念は、心の中に入り、そして持続性で、侵入的で、かつ歓迎されない、再発性の考え、思考、想像、または衝動である。この思考を無視するか鎮圧する試み、またはこれらを何か他の思考もしくは行為で無効にする試みがなされている。個人は、これらを自分自身の心の産物として認識する。強迫行為は、強迫観念に対して行われる反復性の目的のある行動であり、そして不快感または何か非常に恐ろしい出来事もしくは状況を無効にするかまたは予防することを意図している。一般的な強迫観念は、汚染という思考に関係する;過剰な手洗いは一般的な強迫行為である。
【0058】
「遅発性ジスキネジー」:本明細書中で使用される場合「遅発性ジスキネジー」は、遅延性失調および長期の神経弛緩薬の使用に関する他の運動障害を含むことを意味する。略語TDが、用語「遅発性ジスキネジー」の代わりに使用され得る。
【0059】
「トゥレット症候群」:「トゥレット症候群(Tourette’s syndrome)」は、本明細書中で使用される場合、「ジル・ド・ラ・ツレット症候群」、「トゥレット症候群(Tourette syndromes)」、「トゥレット障害」、および同様の表現を用いる症候群である。略語TSが、これらの用語のいずれかの代わりに使用され得る。
【0060】
「眼瞼痙攣」:本明細書中で使用される場合、「眼瞼痙攣」は、眼瞼痙攣ならびに顔および/または首の失調との組合せであるメージュ症候群を含む。
【0061】
「チック障害」:「チック障害」とは、本明細書中で使用される場合、突然の反復性の運動、身振り、または発声をいい、これらは目的のある行動の断片を模倣していることがしばしばである。チックは、常同性で反復性であるが不規則にリズミカルで不随意性な運動を特徴とする。これらは、運動チックおよび声(音声)チックの両方を含む。チック障害としては、例えば、単純性チック、複合性チック、および発声を伴う複合性チックとして定義されるジル・ド・ラ・ツレット症候群が挙げられる。
【0062】
「行動障害」:「行動障害」は、本明細書中で使用される場合、発声を含む全ての形態の異常かつ不随意性な行動をいうために使用される。行動障害としては、例えば、遅発性ジスキネジー(TD)、チック、ジル・ド・ラ・ツレット症候群(TS)、パーキンソン病、ハンティングトン病、および焦点失調(例えば、眼瞼痙攣)が挙げられる。
【0063】
(発明の詳細な説明)
本発明は、任意の神経精神医学的障害(例えば、任意の不安障害、任意の精神病性障害、任意の気分障害、または任意の身体表現性障害)の処置に関し、ここで主な症状は、反復性で、未所望の、侵入性かもしくは不随意性な常同性の思考、知覚、または行動の発生である。特に、本発明は、PTSD、OCDおよび身体表現性障害を含む神経精神医学的障害の処置、ならびにこのような反復性の思考、知覚、および行動が他の障害(例えば、精神分裂症、大うつ病、および双極性障害を含む)の症状として生じる場合のこれらの処置を提供する。本発明の1つの局面において、本発明者は、禁欲性アルコール中毒の処置のために、そしてより最近では行動障害の処置のために使用され(係属中の特許出願、出願番号09/006,641を参照のこと)、神経精神医学的障害の処置での使用を意図されない試薬が、神経精神医学的障害に関連する還元症状(reducing symptoms)において有効であることを発見した。
【0064】
数年前、本発明者は、遅発性ジスキネジー、他の神経弛緩薬誘導性の行動障害、およびこれらに類似する自発的な行動障害が、脳幹神経節を含む神経回路において非線形振動の形態を示すこと、ならびにこの振動が興奮性神経伝達をブロックする試薬によって減少され得ると仮定した。PETスキャン研究は、TDを有する精神分裂症の患者において、淡蒼球および主要な運動皮質中の代謝の増加を示したが、TDを有さない患者においては示さなかった(Pahlら、J.Neuropsych Clin Neurosci 7:457,1995))。このことは、非線形振動として機能するTDが、運動皮質回路における機能亢進と関係があることを示唆する。
【0065】
上記のように、本発明者は、線条を通る運動制御回路において利得を減少させるように作用する試薬が、TDおよび関連する運動障害(例えば、トゥレット症候群およびチック)に対して有益な作用を有し得るという仮定を前進させた。GABAは、線条における阻害性神経伝達物質である。本仮定の裏付けは、直接的または間接的にGABAレセプターを刺激する試薬が神経弛緩薬誘導性の運動障害を減少し得ることを示す、動物の証拠(Gaoら J.Neural Transmission 95:63,1993;Stoessl,Pharmacol.Biochem.Behav.,54:541,1996)から生じる。神経弛緩薬誘導性の運動障害を有するラットは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GABAの産生におけるラット限定酵素)の線条体レベルの減少を示す(Delfsら、Exp.Neurol.,133:175,1995)。
【0066】
本発明者は、本発明の生化学的機構を制限することなく、仮定された振動性回路における利得を減少するように作用する薬物が、遅発性ジスキネジーの不随意性運動を減少することを提案する。GABA、グルタミン酸塩、およびドーパミンは、回路における主要な神経伝達物質である。ノルエピネフリン、セロトニン、アセチルコリン、および内因性アヘン剤を含む他の神経伝達物質は、振動性回路に対して間接的な作用を有すると仮定される。本発明者の同時継続中の特許出願、出願番号08/861,801および09/193,892(この教示は、本明細書中で参考として援用される)において、本発明者は、興奮性神経伝達物質の特定のアゴニストが、TDに関連する行動障害および認知障害の両方、遅発性失調、ならびに関連する行動障害を処置する際に有効であることを開示した。本出願において本発明者は、非限定的な様式で、振動性回路における利得を減少するように作用するアンタゴニスト型薬剤を使用して、広範な種別に分類される広範な種々の神経精神医学的障害を処置し得ることを提案する。この仮定の裏付けが、以下に記載される。
【0067】
(神経精神医学障害と運動障害との関係)
PTSDとチックとの間には、注目に値する類似性が存在する。PTSDと同様に、チックは、反復性不随意の常同性現象(すなわち、PTSDの場合の思考および想像、ならびにチックの場合の単純な目的のない運動)を含む。両方の場合において、新皮質の表示(neocortical representation)は、線条体または辺縁系の入力によって活性化される。チックは、意識的な努力によって一時的に抑制され得る。しかし、その努力を止めるか、または抑制の努力にもかかわらずチックが現れる場合、しばしばその頻度またはリバウンドがリバウンドする。同様の現象がPTSD現象の実験モデルの侵入性心象によって証明されている。苦悩を与えるフィルムの画像の対象によって思い起こされる(Davies MI;Clark DM:思考抑制は、類似の心的外傷後侵入によるリバウンド効果を生じる。Behav Res Ther、36:571〜82、1998 6月)。
【0068】
OCDはまた、運動障害と強く関連している。OCDは、Gilles de la Tourette症候群(トゥレット症候群、TS)ならびにシドナム舞踏病およびハンティングトン病を含む幾つかの他の基本的な神経節疾患と関連している。OCDと運動との間の関連についての強力な証拠が存在する。TSを伴う患者におけるOCDの発生の見積が5%から50%以上まで変化する間、全ての見積が一般的集団におけるOCDの羅患率より有意に高い。OCDとTSとの間で共有される臨床的特徴は、「症状の増大および衰退、発症時の初期年齢、自我−筋緊張異常行動(すなわち、個体の意識的優先に対して反対の行動)、うつ病および不安による悪化、ならびに同じファミリーにおけるそれらの発生」(RobertsonおよびYakely、前出)を含む。遺伝研究は、幾らかのファミリーにおいて、表現型的に、TS、OCD、または両方として表現され得る単一の常染色体の優性遺伝子が存在することを示唆する。TSは、最もよく、ドーパミンアンタゴニストで処置され、そしてOCDはセロトニン再摂取インヒビター(SRI)で処理される。しかし、ドーパミンアンタゴニストの添加は、OCDにおけるSRIの治療的効率を増大し得、SSRIの添加はTSにおけるドーパミンアンタゴニストの効率を増大し得る。これらの考慮の全ては、OCDおよびTSについての重複する生理学的機構が存在するという考えを支持する。
【0069】
チックおよびOCDの両方とも、A群β−溶血性連鎖球菌−PANDAS症候群−連鎖球菌に関連する小児自己免疫障害の感染に対する自己免疫反応のCNS効果によって生じ得る(Swedo Seら:Pediatric Autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infections:最初の50症例の臨床的記載。Am J Psychiatry、155:264−71,1998 2月)。同様に、外傷性脳傷害は、チックおよびOCD症状の同時の新たな発症を導き得る(Krauss JK;Jankovic J:Tics secondary to craniocerebral trauma.Mov Disord、12:776−82、1997 9月)。
【0070】
OCD症状を、眼瞼痙攣、基本的神経節機能不全によって引き去れる焦点失調、および片側顔面の癲癇、末梢神経不全による皮相的に同様の症状を伴う症候群、を伴う患者間で比較した。眼瞼痙攣患者は、症状チェックリスト上に有意により多くのOCD症状を有した(Broocksら、;Higher prevalence of obsessive−compulsive symptons in patients with blepharospasm than in patients with hemifacial spasm.Am J Psychiatry、155:555−7、1998 4月)。
【0071】
OCDは、TSと関連しているだけでなく、強迫現象はチックと共通の臨床的特徴を共有する。両方とも、反復性で、常同性の不随意性現象に関する。OCDの場合、これらは思考であるか、または目的のある一続きの運動(強迫儀式)であり;チックの場合、それらはより単純で目的のない運動である。両方とも、辺縁系または線条体の入力による新皮質の表示の活性化に関する。
【0072】
上で注意したように、チック、OCDの強迫および儀式、PSTDの侵入性思考および想像の間には臨床的類似性および生理学的類似性が存在する。チックおよびOCDの病態生理学的関連、疫学的関連、および臨床的関連は、PTSDとチックとの関連より幾分か強いが、PTSDおよびOCDの両方とも、チックと関連し得る。それ故に、チックに有用な処置はPSTDの侵入性現象に有用であり、そしてそれらがPTSDにおいて有用である場合、それらはまた、OCDの強迫観念および強迫行為において有用であると結論付けた。
【0073】
運動障害と身体表現性障害との間の連結は、身体表現性障害、PTSDおよびOCDの間の相関を通してなされ得る。幾つかの関連研究は以下の通りである: 1)Rogersらは、不安障害を伴う654人の患者のサンプルにおける身体表現性障害の羅患率を研究した。36人(5.5%)の被験体が、過去または現在の身体表現性障害を有した。身体表現性障害を伴う被験体は、心的外傷後ストレス障害の病歴を有意に有するようであった(22%対8%)(RogersMRら:Prevalence of somatoform disorders in a large sample of patients with anxiety disorder.Psychosomatics,37(1):17−22 1996 1〜2月)。
【0074】
2)徹底した婦人科学的評価によって説明されていない慢性骨盤痛を伴う女性を、痛みがないかまたは身体の幾らか他の領域において痛みを有するコントロールと比較した。慢性骨盤痛を伴う女性は、他の2つの群のいずれかより、はるかに高い率の過去の性的虐待を有した(Collett BJら:A comparative study of women with chronic pelvic pain、chronic nonpelvic pain and those with no history of pain attending general practitioners.BrJ Obstet Gynaecol,105(1):87−92 1998 1月)。
【0075】
3)偽発作(非癲癇性発作)を伴う45人の患者の研究(偽発作診断は、同時のビデオ記録およびEEG記録によって確認される)は、心的外傷後ストレス障害の49%の羅患率を示した(Bowman ES;Markand ON:Psychodynamics and psychiatric diagnoses of pseudoseizure subjects.Am J Psychiatry,153(1):57−63 1996 1月)。
【0076】
4)OCDを伴う442人の患者の研究は、12%が身体異型障害の同時診断を有することを明らかにした。著者らは、この2つの障害が「強く関連している」と結論付けた(Simeon Dら:Body dysmorphic disorder in the DSM−IV field trial for obsessive−compulsive disorder.Am J Psychiatry,152(8):1207−9 1995 8月)。上で注意したように、後の研究は、SRI(OCDのための処置の主流)が身体異型障害の処置において有効であることを示した。
【0077】
5)婦人科学評価によって説明できない慢性骨盤痛を伴う女性は、PTSDを伴う女性に見られるのと同じ視床下部−下垂体−副腎調節の異常性を示す。正常なコントロールと比較した場合、両方の場合において、副腎はACTHに応答してコルチゾールを産生せず、コルチゾールは低容量のデキサメタゾンでより抑制する(Heim Cら:Abuse−related posttraumatic stress disorder and alternations of the hypothalamic−pituitary−adrenal axis in women with chronic pelvic pain.psychosom Med,60(3):309−318 1998 5〜6月)。
【0078】
6)256人の大学生の研究は、自己報告された神経性嗜癖およびチック(彼ら身体的感覚の自覚)と彼らの不安のレベルとの間のポジティブな相関関係を示した。(Woods DWら、:Habits,tics,and stuttering.Prebalence and relation to anxiety and somatic awareness.Behave Modif,20(2):216−225 1996 4月)。因果関係の方向性は明らかではないが、この関連性は、共通して根底にある生理学的な障害(disturbance)が、個体をチックに罹患しやすくする、および身体的症状の増幅の素因になるという両方の考えと一致する。
【0079】
まとめると、このような研究は、外傷がPTSDおよび種々の身体型障害の両方、およびしばしば、この2つの組み合わせを誘導し得ることを示唆する。心気症(身体の異型障害)とOCD(特に強迫観念を伴う)との間で症状における重複が存在する。同様に、チックとOCD(特に強迫行為を伴う)との間で症状における重複が存在する。心気症または身体の異型障害を有する個体は、病気についての;またはその出現についての脅迫的な思考を有する。チックの症状は、単純な強迫行為と共通点がある。これらの状態の全てにおいて、再発性、同常性、未所望、侵入性または付随意性の思考、知覚または行動が存在する。さらに、全ては、増加した不安に関連する。これらの特色は、いくつかの状態の重複する病態生理を示唆する。異なる傷害の間の症状および機構における重複は、PTSD、チックおよびOCDに効果的な処置がまた、身体型障害に対して有利であることを示唆する。
【0080】
(体性痛から身体化への、不明確な飛躍)
疼痛伝達および調節の生理学に基づいて、薬物の投与量が十分である場合、体性痛が組み合わされたGABA−AアゴニストおよびNMDA−グルタメートアンタゴニストポリペプチドを有する薬物に応答することを期待する(Canavero S;Bonicalzi V:前出)。しかし、PTSD、OCDおよびチックに対するそれらの類似性を有し、そして反射神経ループによる推定上の発生を伴う徴候の身体化は、体性痛伝達に有意に影響するのに十分ではないそのような薬物の量に応答し得る。実際に、本発明者が運動障害のために個人的にアカムプロサートで処置した5人の患者は全員、症状として疼痛を伴う併発性の病気を有した。運動障害のためにそれらが1日に数回を要するアカムプロサートの用量(333〜666mg)に由来する鎮痛効果を、だれも報告しなかった。
【0081】
上記の考察に基づいて、本発明者は、適切な割合で組み合わされたGABA−AアゴニストおよびNMDA−グルタメートアンタゴニストの効果を有する薬物が非毒性投与量で、および一般的な鎮痛と必ずしも関連しない用量で、身体型障害を軽減することを提示する。当然のことながら、疼痛ではない症状に対するこれらの薬物の効果は、GABA、グルタメートおよび脊髄疼痛伝達に対する動物実験により全く意味されない。
【0082】
(神経精神医学的障害の処置)
この実験および上記の推理に基づいて、本発明者は、PTSDを有する患者にアカムプロサートを投与した(実例報告1を参照のこと)。この患者は、副作用を伴わずに、用量関連様式でPTSD症状の有意な軽減を享受した。PTSD症状の応答は、気分および不安のレベルの非特異的な変更に起因しなかった。実際、患者は、彼女が憂鬱になるかまたは不安を感じた日に、フラッシュバック、外傷性記憶および情動的無感覚の軽減を経験した。フラッシュバックの頻度、外傷性事象についての侵入性思考、および精神的無感覚の領域において、改善を経験した。さらに、この患者は、外傷性事象についてより自由に話し得、そして自己障害性行動および彼女の驚愕反応の重症度における減少を示した。
【0083】
以前のそして同時系属中の一部継続特許出願(通し番号第09/193,892号)において、本発明者は、組み合わされたGABA−Aアゴニスト/NMDA−グルタメートアンタゴニストであるアカムプロサートが、チックの処置において著しい利点を有することを示した。この利点は、マグネシウムの添加により増強された。アカムプロサートでの処置の利点はまた、NMDA−グルタメートアンタゴニスト(例えば、メマンチン)の添加により改良され得た。別の局面において、アカムプロサートでの処置の利点は、別のGABA−Aアゴニストの同時投与により改良され得た。当業者は、NMDAアンタゴニストまたはGABA−Aアゴニストであるマグネシウムが、アカムプロサートとだけではなく、NMDAアンタゴニスト活性またはGABAアゴニスト活性の両方を有する任意の薬剤(または薬剤の組み合わせ)と組み合わされ得ることは、認識される。運動障害を処置する場合、本発明者はまた、GABA−A作用およびNMDA作用の相乗作用が、マグネシウムを有してもまたは有さなくても、アカムプロサートが非毒性用量での有意な治療作用を提供することを可能にしたことを観察した。さらに、この効果の相乗効果は、対応する毒性の相乗効果の非存在下で観察された。ひいては、本発明者は、毒性の相乗効果を伴わないこの効果の有利な相乗作用が、GABA−AアゴニストおよびNMDA−グルタメートアンタゴニストの組み合わされた使用で生じ、精神神経医学的障害を処置することを提唱する。
【0084】
本発明において、本発明者は、グルタメートに対するNMDA型レセプターのシナプス後性応答をも減少するGABA−レセプターアゴニストであるアカムプロサートが、PTSD、OCD、身体型障害(身体化障害、転換性障害、心気症および身体異型障害)ならびにうつ病、躁病および精神分裂病を含む他の神経精神医学的障害に関連する症状を減少または回復し得ることを開示する(これらの障害が反復性の常同性思考、知覚および行動に関連する症状を有する場合)。1つの重要な例は、大うつ病であり、この頻度は、罪悪感または悲観的なテーマに対する反復思考に関連する。
【0085】
あるいは、アカムプロサートおよび関連する化合物を使用して、症状(例えば、運動障害と関連する反復性、未所望、不随意性または侵入性、常同性の思考、知覚または行動)を処置し得る。そのような症状を示し得る運動障害のいくつかの例としては、トゥレット症候群、焦点失調、ハンティングトン病、パーキンソン病、シドナム舞踏症、全身性エリテマトーデスおよび薬剤誘導性運動障害が挙げられる。
【0086】
本発明の理論に従うと、NMDAタイプグルタメート伝達に対するアンタゴニスト効果と同時のGABA−Aアゴニストは、神経精神医学障害(PTSDを含む)と関連した症状および伸長(extension)OCDおよび身体表現性障害による症状の重症度を減少する。さらに、本発明者は、(i)NMDAタイプグルタメート神経伝達を減少し、かつ(ii)GABAーAレセプター神経伝達を増加する、アカムプロサートおよび他の薬剤が、PTSD、OCD、身体表現性障害および他の神経精神医学的障害の処置に有用であることを提案する。
【0087】
非毒性投薬時の、同時相乗GABA−Aアゴニスト作用およびNMDAアンタゴニスト作用を有する薬物のクラスは、神経精神医学的障害に対する大きな新規のクラスの治療剤を表す。本発明者は、精神薬理学における「ブレークスルー」としてのこれらの薬物の概念の新規性を主張する。進歩した原理は、多くの重要な神経精神医学的障害が、皮質、線条、および視床を通る神経精神医学的神経ループの異常な活性を含むことである。これらのループの異常な活性は、再発性、常同性、および未所望、侵入性、または不随意性の思考、知覚、および行動を生み出す。扁桃および後部帯状領域のような辺縁系の構造は、これらの回路の一部であるか、またはこれらに影響する。それらの主要な伝達としてのGABAまたはグルタメートを有するシナプスは、これらの回路の一部である。あるいは、GABAおよびグルタメートは、これらの回路の2つ以上のシナプスにおいてトラフィック(traffic)を調節する。辺縁系または脳幹神経節におけるGABAの過剰または不足は、神経精神医学的障害に寄与し得る。GABA−Aアゴニスト作用(抑制性の影響を増加する)が、NMDAアンタゴニスト作用(興奮性の影響を減少する)と組み合わせられるので、回路における利得は、二つ以上のシナプスにおいて減少し、全体として回路における活性の実質的な減少に導く。これらの皮質−線条−視床回路における再発性の活性を含まない正常な神経トラフィックは、症状生成に対する原因の活性よりも少ない程度に影響する。これは、正常なトラフィックが、多くのシナプスにおいて影響しないのであてはまる。さらに、本出願によって含まれるこれらの薬物のうちのいくつかは、個々のシナプスにおける正常な活性を、それらが過剰な活性を減少するほど大きくは減少し得ない。
【0088】
本明細書に開示される発明は、幅広い範囲を有し、これには、特定の治療目的のための作用の特定の組合せを有する薬物の使用を含む。種々の異なる化合物および送達系が本発明を具体化するために使用され得ることが当業者に明かである。薬剤は、二つの活性部分(一方がNMDAアンタゴニストで他方がGABA−Aアゴニスト)を用いて合成され得る。あるいは、薬力学的性質の所望の組合せを有する薬剤は、それらの吸収、薬物動態学、または血液脳関門を横切る能力を改良するために改変され得る。薬剤は、吸収の信頼性または投与の便利さを改良するために、種々の送達系によって送達され得る。
【0089】
アカムプロサート(N−アセチルホモタウリン酸カルシウム)は、N−アセチルホモタウリンのカルシウム塩、アミノ酸タウリンの誘導体(タウリンは、アミノエタンスルホン酸である。ホモタウリンは、アミノプロパンスルホン酸である。アセチルホモタウリンは、N−アセチルアミノプロパンスルホン酸である)である。これは、アルコールに対する欲求を減少するかまたは抑制するために禁断アルコール依存症の処置において臨床的に使用される。アカムプロサート(これは、抑制性神経伝達GABAに化学的に類似する)は、GABAアゴニスト(特に、GABA−Aレセプターにおいて)である。さらに、このアカムプロサートは、NMDAタイプグルタメートレセプターのシナプス後応答を減少し、そして電位作動チャネルによるカルシウム流入を減少する(WideおよびWagstaff、Drugs、53:1039〜53、1997)。
【0090】
アカムプロサートは、その低い毒性のために、神経精神医学的障害に現在利用され得る医薬品を用いて処置する場合、非耐性の副作用を経験する患者を処置する際における使用について特に魅力的な薬物である。3,338人の患者を含むアルコール依存症処置のための制御された試行において、アカムプロサートは、重篤な医療的なまたは神経学的な副作用を有さなかった。実際、被験体の脱落者の割合は、アカムプロサートを受容するグループおよびプラシーボを受容するグループにおいて同一であった(WildeおよびWagstaff、Drugs、June、53(6):1038〜53、1996)。多くの患者は、SRI(現在の標準的な処置である)から非耐性の副作用を経験する。アカムプロサートは、SRIに置き換えて、またはSRIの効力を増強するために、のいずれかで使用され得、より少ないより良い耐性の投薬の使用を可能にする。
【0091】
GABA(GABA−Aレセプイターによる)およびグルタメート(NMDAレセプターによる)を含む運動制御回路に関する上記仮説は、GABA−AアゴニストおよびNMDAタイプグルタメートアンタゴニストである任意の薬剤が、神経精神医学的障害を寛解させ得ることを意味する。アカムプロサート(N−アセチルホモタウリン酸カルシウム)は、PTSDの処置における効力のヒトにおける直接の証拠を提供するこのような薬物の特定の例である。このような薬物の他の例には、N−アセチルホモタウリンの他の塩、GABA−AおよびNMDAタイプグルタメート伝達に対して類似の効果を有するホモタウリンおよびアセチルタウリンの誘導体、ならびに肝臓,血液、または脳において代謝されて、類似の薬力学的特性を有するN−アセチルホモタウリネートまたは関連化合物を生成するプロドラッグが挙げられる。
【0092】
従って、本発明の好ましい実施形態は、神経精神医学的障害の処置のために患者に効果的で非毒性の投薬でのホモタウリンおよびN−アセチルホモタウリンの誘導体を提供する。胃腸管から容易に吸収されるアカムプロサートの誘導体が特に好ましい。アカムプロサートは、アセチルホモタウリン酸イオンの極性、親水性の特徴に一部起因して、GI管から不規則に吸収される。薬物の特定の誘導体が、より脂質親和性であるために、より良く、より容易に吸収され得ることが当該分野で周知である。例えば、アセチルタウリン酸イオンから調製されるエステルは、より脂質親和性であり、従って、腸粘膜の膜を通るより大きくより予測可能な吸収を有する。このようなエステルが、非毒性であり、自然に身体内において代謝される(例えば、血液、肝臓または脳において酵素によって切断される)場合、アセチルホモタウリンイオンの脳への信頼性のおける送達のためのビヒクルとして特に好ましい。さらに、上記のような誘導体は、アカムプロサートに応答する任意の神経精神医学的障害を処置する際に、適切な投薬において等しいまたはより大きな効力を有する。あるいは、薬物は、より良い吸収のための脂質親和性分子に共有結合され得る。
【0093】
一般的に、アカムプロサートの改良された送達を有する任意のプロドラッグはまた、本発明に従う送達の好ましい手段である。アカムプロサートの特に好ましい形態は、長い半減期を有するアカムプロサートの誘導体である。アカムプロサートのこのような誘導体は、アカムプロサートよりも臨床的に優れる。なぜなら、アカムプロサートが使用される場合に必要とされる、一日当たり3または4回よりもむしろ、毎日一回で摂取し得るからである。アカムプロサートまたは関連する医薬品の半減期を長くするためのさらなるアプローチは、それを時間放出カプセルで送達することである。
【0094】
別の好ましい実施形態において、薬学的因子は、GABAレセプターアゴニストとして作用し、そして間接的または調節的機構によりNMDAレセプター機能を減少させるようにも作用する因子の群から選択される。これらの因子としては、例えば、非限定的様式において、アカムプロサートカルシウム(acamprosate calcium)(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)、他のN−アセチルホモタウリネートの塩(例えば、マグネシウムN−アセチルホモタウリネートまたはリチウムN−アセチルホモタウリネート)、アセチルホモタウリン塩基、GABAおよびグルタメート伝達に対して同様の薬力学的作用を有する他のホモタウリン誘導体、ならびに肝臓、血液または脳において代謝されて、GABAおよびグルタメート伝達に対して同様の薬力学的作用を有するN−アセチルホモタウリネートまたは関連化合物を生じるプロドラッグが挙げられる。別の好ましい実施形態において、薬学的因子は、線条体細胞においてグルタメートにより生じる興奮性シナプス後電位を減少させる能力を有する因子の群から選択される。これらの因子としては、アカムプロサートおよび類似の化合物の範囲および以前に記載されたプロドラッグが挙げられる。他の好ましい実施形態において、2つ以上の薬学的因子の組合わせが選択され、その結果、この組合わせは、GABA伝達(特にGABA−Aレセプターを介する)を増大させ、かつNMDA型グルタメート伝達(例えば、非競合的阻害、またはNMDAレセプターに対する間接的もしくは調節的効果による)を減少するように並行して作用する。第4の実施形態は、このような化合物または化合物の混合物を、メマンチンまたは以下に詳細に記載される類似の非競合的NMDAレセプターブロッキング因子と組合わせることである。この組合わせは、混合物、結合作用により共有結合した部分、または血液、肝臓または脳において代謝されて、組合わせの各メンバーを放出するプロドラッグのいずれかであり得る。
【0095】
マグネシウムイオン(カルシウムチャネルをブロックする)は、NMDA−グルタメートレセプターアンタゴニストであることが公知である。マグネシウム塩またはキレートが別のNMDAアンタゴニストとともに与えられる場合、後者の作用が増強される。特に本発明は、マグネシウムの補充が神経精神医学的障害の処置においてアカムプロサートの作用を増大させ得ることを示す。
【0096】
効果的な薬物処置は、PTSDを処置し得るのみならず、ストレスを受けた後直ぐに与えられる場合、PTSDを予防し得る。外傷被害者は、PTSDを発症する危険性が特に高いことが予測的に認められ得る。これらの外傷被害者は、幼少期における以前の外傷履歴を有する人、ならびに急性のストレス反応を有する人が挙げられる。例えば、レイプ被害者は、PTSDを発症する危険性があり得、そしてPTSDの発症を予防するために有効用量のアカムプロサートが投与され得る。別の実施形態において、マグネシウム補充は、GABA−Aアゴニストと組合わせて使用され、PTSDの危険性がある人のPTSDの発症またはその危険性があると認められた人の別の神経精神医学的障害の発症を遅らせ得る。なお別の実施形態において、マグネシウムの補充は、種々の神経精神医学的障害と関連した症状を減少させる。本発明は、NMDAアンタゴニスト−GABAアゴニストの組合わせストラテジーの使用を教示し、このストラテジーは、神経精神医学的障害を処置および予防するためのマグネシウムの投与を伴ってもよいし、伴わなくてもよい。
【0097】
本発明に従って、マグネシウム補充は、他のNMDA型レセプターアンタゴニストおよびダウンレギュレーターの治療的効果を増強させる(症例報告5を参照のこと)。1つの好ましい実施形態において、マグネシウムは、アカムプロサート(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)とともに投与されて、神経精神医学的障害を処置する。特に好ましい実施形態において、N−アセチルホモタウリンのマグネシウム塩、およびGABA伝達を同様に増強し、かつNMDA−グルタメート神経伝達を減少させるN−アセチルホモタウリン誘導体のマグネシウム塩は、神経精神医学的障害のための有効な処置である。カルシウムN−アセチルホモタウリネートが有効な処置であり、マグネシウムN−アセチルホモタウリネートおよびGABA神経伝達およびNMDA−グルタメート神経伝達に対して同様な効果を有するN−アセチルホモタウリン誘導体のマグネシウム塩もまた有効な処置であるための全ての条件は当業者により認識される。このような化合物の1つの特定の例は、2つの活性部分(すなわち一方はGABA−Aアゴニストであり、そして他方は、NMDAアンタゴニストである)を有する1つの化合物である。身体において、この化合物は、インタクトなままであり得るか、または2つの化合物(すなわち、一方は、GABA−Aアゴニスト活性を有するもの、そして他方はNMDAアンタゴニスト活性を有するもの)に代謝され得るかのいずれかである。あるいは任意のマグネシウム塩またはキレートは、ホモタウリンまたはN−アセチルホモタウリンの誘導体の任意の塩(共に、NMDAアンタゴニストおよびGABA−Aアゴニスト活性を有する)と共に投与されて、神経精神医学的障害を処置し得る。1つの非限定的例において、適切な用量のアカムプロサートとともに適切な用量のマグネシウムを含有する丸剤が処方されて、そして神経精神医学的障害を有する患者に投与され得る。他の好ましい実施形態において、NMDAアンタゴニスト活性およびGABAアゴニスト活性を有する因子は、丸剤中に適切な用量のマグネシウムと合わされる。なお別の好ましい実施形態において、NMDAアンタゴニストは、丸剤の形態で適切な用量のマグネシウムでGABAアゴニストと合わせられる。当業者は、投与する組成物が丸剤に限定されず、シロップ、エリキシル、液体、錠剤、徐放性カプセル、エアロゾルまたは経皮的パッチでもあり得ることを認識する。
【0098】
アカムプロサート 対 マグネシウムの比は、2つの成分の治療的相乗作用が最適になるように変化され得る。本発明者は、有効用量の範囲が神経精神医学的障害の処置について運動障害と同様であることを提唱する。しかしいくらかのバリエーションが存在し得、そして用量範囲は、当業者により実験的に決定され得る。マグネシウムNアセチルホモタウリネート(Durlach、前出;1980)(マグネシウム:アセチルホモタウリネート比は、約1:20の重量比である)は、運動障害の処置について2つの成分の治療的効果を最適化しない(本明細書中で参考として援用される米国特許出願番号第09/006,641号および同第09/193,892号を参照のこと)。代表的な治療的投薬量のアセチルホモタウリネートでは、マグネシウムの量は低すぎて、グルタメート伝達に対する治療的関連効果を有しない。本発明者の経験では、2g日用量のアカムプロサートと1gの元素状態のマグネシウム(elemental magnesium)(塩またはキレートとして与えた場合)の組合わせから優れた治療結果を得た(米国特許出願番号第09/193,892号を参照のこと)。この組合わせは、2gのアカムプロサート単独よりも、TDおよびチック両方のより良好な軽減を生じた。本発明者はまた、単一用量のマグネシウム300gが単一用量のアカムプロサート666mgの治療的効果を増大させることを実証した。当業者は、この用量範囲が、運動障害を処理するために有効であり、他の神経精神医学的障害を処置するために有効でもあることが決定されることを予測する。なぜなら、仮定した治療作用の機構が同じであるからである。
【0099】
個々の応答の変動、ならびにアカムプロサートおよびマグネシウムの両方の腸吸収の変動を可能にして、本発明者は、神経精神医学的障害の処置のために個々の患者に対して最適であるMg:アセチルホモタウリネートの比が、1:6〜1:1の間のいずこかであることを主張する。アカムプロサートに対するマグネシウムのより低い比は、アカムプロサートの治療効果を有意にはブーストしないようであり、そして1:1より高い比は、マグネシウム毒性(または少なくともGI不耐性)を、代表的な毎日の2グラムのアカムプロサート用量において、生成するようである。マグネシウムN−アセチルホモタウリネートは、神経精神医学的障害の処置のために、カルシウムN−アセチルホモタウリネートよりわずかに効率的であり得るが、本願において、本発明者らは、マグネシウムイオンを(塩またはキレートとして)N−アセチルホモタウリネートの塩と組み合わせて投与することにより、アカムプロサートおよび関連する化合物のマグネシウム含有量を、効果的に増加させている。なぜなら、アカムプロサートのマグネシウム塩に存在するより高い比の、アカムプロサートに対するマグネシウムを投与することの有意な利点があるからである。
【0100】
本発明の別の局面は、神経精神医学的障害(不安障害、精神病性障害、気分障害および身体表現性障害を含む)の、NMDAアンタゴニスト活性とGABA−Aアゴニスト活性とを同時に有する薬剤または薬剤の組み合わせを、マグネシウムの同時投与を行わずに用いる予防を包含する。本発明のこの局面の好ましい1つの実施形態において、このようなNMDAアンタゴニスト/GABA−Aアゴニストの組み合わせを使用して、神経精神医学的障害の発達または深刻化を、例えば、神経精神医学的障害の予備的な症状を示す患者において、予防する。本発明のこの局面の別の好ましい実施形態において、NMDAアンタゴニスト/GABA−Aアゴニストの組み合わせの活性を使用して、ストレスの後の神経精神医学的障害(例えば、PTSD)の発達を予防する。特に好ましい実施形態において、NMDAアンタゴニスト/GABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤または薬剤の組み合わせを、PTSDのような神経精神医学的障害を発達させる危険を有する患者に投与して、物質の乱用および具体化の合併症を予防する。特に、過度のストレスに続くアルコール症の予防は、特に所望される。アルコール症は、しばしば、PTSDの合併症として、および/または患者の生活の心的外傷性事象に続いて、発達する。心的外傷後の物質の乱用の発達を予防するために、心的外傷性事象を経験した患者を、組み合わせたNMDAアンタゴニスト/GABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤で、その心的外傷性事象の発生の直後に処置する。禁断アルコールの処置におけるアカムプロサートの価値は、周知である。しかし、危険性のある患者におけるアルコール症を予防する際のアカムプロサートの使用は、これまでに示唆されていない。
【0101】
当業者は、本発明がPTSD、OCDおよび他の神経精神医学的障害を、GABAレセプターおよびNMDAレセプターへの直接の影響により、NMDA型グルタメート神経伝達を減少させ、そしてGABA神経伝達を増加させる、任意の薬剤で処置する方法に限定されないことを、理解する。本発明はまた、レセプターへの間接的な影響(すなわち、神経伝達物質放出に対するシナプス前の影響、レセプター部位のアロステリックなモジュレーション、または伝達物質のレセプターへの結合への細胞内応答に対する影響による)、伝達物質放出に対するシナプス前の効果、GABA再取り込みの阻害などにより、NMDA−グルタメートおよびGABAの伝達を同じ方向に改変する薬剤の使用を包含する。誘導体およびプロドラッグの範囲は全て、これらが非毒性投薬量でGABA−AおよびNMDA−グルタメート伝達に対して十分な効果を有する限り、治療的に有効であるべきであることが、当業者に明らかである。アカムプロサートの治療効果の基礎となると仮定される、グルタメートおよびGABAの伝達に対する効果を共有する、任意の化合物または混合物は、特許請求される本発明の範囲内である。薬物、プロドラッグまたはその混合物が、NMDA−グルタメート神経伝達をどのように減少させ、そしてGABA神経伝達をどのように増加させるかは、許容可能な非毒性(例えば、毒性の受容不可能な副作用がない)投薬量において神経精神医学的障害に関連する症状を改善することのみであり、問題ではない。
【0102】
先に議論したように、本発明の処置を使用して、未所望の、侵入性の、もしくは不随意性の反復症状、常同性の思考、知覚、または行動を含む、任意の神経精神医学的障害を処置し得る。さらに、本発明の処置を使用して、このような神経精神医学的傷害の結果である症状(例えば、認知の機能不全、または運動、気分、もしくは衝動調節の異常性)を改善または排除し得る。脳幹神経節(線条を含む)は、運動性、認知、および情動の回路の交差点である。脳幹神経節の疾患は、頻繁に、認知、情動、行動、および動機付けの変化、ならびに運動性の機能不全を伴う。大脳辺縁系(扁桃および前帯領域を含む)もまた、この回路に影響を与え得る。本発明において進歩した処置は、脳幹神経節または大脳辺縁系あるいはこれらを通る回路の機能不全を含むいくつかの障害の症状に対して効果的である。これらの処置は、脳幹神経節および大脳辺縁系の障害に付随する他の症状のいくつかを改善することが、予測され得る。
【0103】
本発明を、ここで、以下の非限定的な実施例により示す。
【0104】
(症例報告)
本発明者は、PTSDを患う33歳の女性にアカムプロサートを投与した。この患者は、幼年期および青年期の性的虐待のいくつかの発生が原因で、PTSDを有する。彼女の症状としては、虐待のエピソードの侵入性心象(フラッシュバック)、虐待のエピソードについての侵入性思考(外傷性記憶)、悪夢、増加した驚愕応答、不安、うつ病、男性の仲間の回避、情動の無感覚、自殺の観念化、および自己傷害または危険な行動(例えば、自身の切断、無謀な運転)が挙げられる。上記症状は、多数の投薬(抗精神病薬物(神経弛緩薬)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、および抗痙攣薬を含む)のいずれによっても軽減されなかった。
【0105】
1998年3月に、この患者は、1日に3回の333mgの投薬量で、アカムプロサートを開始した。この用量を、1日に3回の666mgに次第に増加させた。この用量において、この患者は不安がより少なくなり、自殺の観念化が少なくなり、外傷性事象のフラッシュバックが減少し、虐待の侵入性思考が減少し、情動の無感覚が少なくなり、そして彼女をPTSDに陥れた外傷性事象について話す能力がより大きくなった。アカムプロサートの666mgのさらなる用量を、必要により摂取し、彼女の心的外傷の残りにより陥れられた精神病性緊張、絶望、自殺の観念化、および情動の無感覚を軽減した。
【0106】
この患者のPTSDの症状は、1998年3月から1999年3月までの1年の期間にわたるアカムプロサートでの処置に、応答し続けた。この期間にわたって、次第に投薬量を減少させることを試み、この投薬がまだ必要であるか否かを確認し、そして必要である場合には、最少有効用量を決定した。彼女の症状は、数回繰り返した用量に関連する様式で、応答した。
【0107】
様々な投薬量のアカムプロサートに対する、特定のPTSDの症状の応答を、ここに記載する。症状の重篤度を、等級付けの日に先行する週の間の症状の強度に関する外科医および患者の意見に基づいて、半定量的に等級付けた。症状の重篤度の尺度は、0〜++++の範囲であり、++++が最も重篤である。
【0108】
【表1】
(要旨)
この症例報告は、アカムプロサートが、効果的かつ非毒性の投薬量において、PTSDの処置のために効果的であることを実証する。PTSDを患う患者へのアカムプロサートの投与は、PTSDに特徴的である、いくつかの再発性の思考、知覚、および行動に関する顕著な応答を生じ、そして彼女の場合には、従来の精神医学的投薬には敏感ではなかった。この患者のアカムプロサート処置に対する応答は、以前に報告された単純なチックを患う患者におけるアカムプロサートの効力の場合と組み合わせて、他の神経精神医学的障害(例えば、OCDおよび身体表現性障害)を患う患者が、アカムプロサートまたは類似の薬剤、あるいはNMDAアンタゴニスト活性およびGABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤の組み合わせから、類似の利益を受けることの証拠および示唆を、提供する。
Claims (17)
- 不安障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量の薬剤を含有し、該薬剤は、GABA−A神経伝達を増加させ、そしてNMDA−グルタメート神経伝達を減少させ、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲であり、ここで、該薬剤は、N−アセチルホモタウリネートカルシウムであり、そして、該症状が、反復、常同性の、未所望の思考;反復、常同性の、未所望の知覚;反復、常同性の、侵入性の思考;反復、常同性の、侵入性の知覚;反復、常同性の、不随意性の運動;反復、常同性の、不随意性の行動;反復、常同性の、脅迫性の運動;および反復、常同性の、脅迫性の行動からなる群より選択される、組成物。
- 不安障害の症状の予防を必要とする患者において、不安障害の症状を予防するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量の薬剤を含有し、該薬剤は、GABA−A神経伝達を増加させ、そしてNMDA−グルタメート神経伝達を減少させ、ここで、該薬剤は、N−アセチルホモタウリネートカルシウムであり、そして、該症状が、反復、常同性の、未所望の思考;反復、常同性の、未所望の知覚;反復、常同性の、侵入性の思考;反復、常同性の、侵入性の知覚;反復、常同性の、不随意性の運動;反復、常同性の、不随意性の行動;反復、常同性の、脅迫性の運動;および反復、常同性の、脅迫性の行動からなる群より選択される、組成物。
- 前記不安障害は、心的外傷後ストレス障害および強迫性障害からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記薬剤が血液中で利用可能である、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記薬剤が脳中で利用可能である、請求項1または2に記載の組成物。
- 経口投与に適している、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記不安障害は、基底核または辺縁系中のGABAの欠乏に関連する、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記不安障害は、基底核または辺縁系中の過剰グルタメートに関連する、請求項1または2に記載の組成物。
- 強迫性障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、NMDA−グルタメートアンタゴニスト活性およびGABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤を、有効かつ非毒性の投薬量で含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲であり、ここで、該薬剤は、N−アセチルホモタウリネートカルシウムである、組成物。
- 心的外傷後ストレス障害を処置するための組成物であって、該組成物は、NMDA−グルタメートアンタゴニスト活性およびGABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤を、有効かつ非毒性の投薬量で含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲であり、ここで、該薬剤は、N−アセチルホモタウリネートカルシウムである、組成物。
- 心的外傷後ストレス障害の症状の進行の予防を必要とする患者において、心的外傷後ストレス障害の症状の進行を予防するための組成物であって、該組成物は、NMDA−グルタメートアンタゴニスト活性およびGABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤を、有効かつ非毒性の投薬量で含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲であり、ここで、該薬剤は、N−アセチルホモタウリネートカルシウムである、組成物。
- 極端なストレスの後の心的外傷後ストレス障害の症状の発症を、心的外傷後ストレス障害の症状の発症の予防を必要とする患者において、予防するための組成物であって、該組成物は、NMDA−グルタメートアンタゴニスト活性およびGABA−Aアゴニスト活性を有する薬剤を、有効かつ非毒性の投薬量で含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲であり、ここで、該薬剤は、N−アセチルホモタウリネートカルシウムである、組成物。
- 不安障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量のN−アセチルホモタウリネートカルシウムを含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲である、組成物。
- 心的外傷後ストレス障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量のN−アセチルホモタウリネートカルシウムを含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲である、組成物。
- 心的外傷後ストレス障害の症状の処置を必要とする患者において、心的外傷後ストレス障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量のN−アセチルホモタウリネートカルシウムを含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲である、組成物。
- 強迫性障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量のN−アセチルホモタウリネートカルシウムを含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲である、組成物。
- 強迫性障害の症状の処置を必要とする患者において、強迫性障害の症状を処置するための組成物であって、該組成物は、有効かつ非毒性の用量のN−アセチルホモタウリネートカルシウムを含有し、ここで、該用量は、1日あたり約1グラム〜1日あたり約2.6グラムの間の範囲である、組成物。
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