1年延期の巡り合わせで守護神に 栗林良吏、自信を持って投げ抜いた

野球

辻健治
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 東京オリンピック(五輪)で、悲願の金メダルを手にした野球日本代表侍ジャパン」。米国との競り合いになった決勝を締めくくったのは、新人ながら広島で抑えを任されている栗林良吏だった。

 2―0の九回にマウンドに立った右腕。2死から右前打を許したものの、次打者に外角のカーブを打たせて二ゴロに。マウンドの近くに集まった仲間たちにもみくちゃにされながら、笑顔で優勝を喜んだ。

 代表に選出され、栗林は「フォークが通用しなかったら、選んでもらった意味がない。自信をもって、自分を信じて、キャッチャーも信じて投げていきたい」と意気込みを語っていた。その言葉通り、闘志を前面に出した投げっぷり。落差の大きいフォークがこの日もさえた。

 愛知黎明高で甲子園出場はなく、名城大ではドラフトでの指名漏れを経験した。トヨタ自動車に進み、150キロ超の直球とフォークを磨いて昨秋のドラフト会議で1位指名を受けた。

 先発や中継ぎも務めてきたが、救援陣の立て直しが急務だった広島では開幕から抑えに抜擢(ばってき)された。初登板から22試合連続で無失点に抑えるなど、シーズン前半戦を終えて18セーブ、防御率0・53と「守護神」の名にふさわしい結果を残している。

 座右の銘は「謙虚」。マウンドに向かう際、深々と一礼してグラウンドに足を踏み入れるのは、「野球の神様」の存在を信じているからだ。誰に対しても分け隔てなく丁寧な物腰で、稲葉篤紀監督は「マウンドに上がった時とのギャップがすごいと聞いていた。普段の話し方からは想像できない」と話す。

 昨年の夏は、社会人の都市対抗野球に向けて調整していた。コロナ禍で開催が1年延期されていなければ、五輪のマウンドに立つ可能性はほぼ無かっただろう。侍ジャパン入りは「全く考えていなかった。本当に入っていいのかなという気持ちもある。いい巡り合わせで選んでもらえたので、感謝しながらやっていきたい」と本番を迎えた。

 今大会は5試合全てで最後のマウンドを託され、計5回を投げて2勝3セーブの好投。25歳は日の丸を背負う重圧にも勝ち、侍の守護神として母国開催の五輪に君臨した。(辻健治)

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