足立区議選で自民「大量落選」は「古い政治への失望」か 変わった勢力図を分析すると

2023年5月22日 22時30分
 2011年に現在の定数(45)になってから最多64人が争った21日投開票の東京都足立区議選。自民党は19人中、現職5人を含む7人が落選し、公明党は13人全員当選し第1会派に躍り出たものの前回から票を減らした。日本維新の会など「新興勢力」の台頭に、自民区議らに動揺が広がる。(井上真典、加藤益丈)

◆自民ベテランも落選

当選を果たし、当選証書付与式に出席した区議ら=22日、足立区で

 「衝撃は大きい。これからまた信頼を築いていかなければいけない」。当選した自民の長沢興祐さん(41)は結果にそう語った。落選者には当選5回以上の会派幹事長を含むベテランも。別の自民区議は「支援者の中には大量落選を『大事件』と呼ぶ人もいたが、党への信頼感が薄くなっている。国政に対する批判も多い」と選挙戦を振り返った。
 公明は4月の統一地方選の区議選で計8人が落選し、今回は山口那津男代表が告示日に応援演説に入るなど必勝を期した。区議会公明党の長井昌則団長は「13人が団結して選挙戦に臨んだ。厳しい戦いではあったが、感謝の気持ちでいっぱい」と話した。ただ全体の得票は前回から約3600票減っており、楽観できない状況は続く。
 一方、維新。4位当選した富田健太郎さん(27)は「風があった。業界団体や宗教団体にとらわれない、新しい政治がもとめられている」。野沢哲也さん(50)も「有権者には自民党政治への怒りがあった。自民に代わる受け皿として選ばれたと思う」とし、維新のほか、れいわ新選組や参政党が初議席を得た点に「古い政治への失望」と表現した。

◆浮かぶ「既成政党の退潮」

 明治大の木寺元きでらはじめ教授(政治学)は「4月の統一地方選で自民党は退潮傾向にあったが、サミットなどで岸田政権の支持率が回復しつつあるように見えた。その中、自民が足立区議選で大きく議席を減らし、第1党から転落したのは衝撃」と驚く。
 統一地方選で明らかになったのは自民党に限らず、練馬区議選で擁立した11人のうち4人が落選した公明党や、全国的に議席を減らした共産党など「既成政党の退潮」という。「熱心な支持者が高齢化し、活動が減ったためではないか」と分析。物価高騰などで暮らしが良くなる手応えが感じられない中、これまで第1党として行政運営を支えてきた自民党に特に不満が向かったとみる。
 「日本維新の会の躍進」も、既成政党が退潮を見せる中で起きた現象とみる。立憲民主党については「足立区議選で議席を維持し、トップ当選を含め得票数で維新を上回るなど、手堅さを見せた」と評価する。
 ただ、小選挙区制が軸の衆院選では、自民が多少支持を落としても、野党が割れている状況では、次期衆院選に与える影響は「未知数」とみる。自民の一部には、サミットを追い風に衆院選を戦いたいという思惑もあるが「現場で選挙を支える自民の地方議員は追い風を感じていないはず」と話す。

◆開票結果を政党別に詳しく見ると

 東京都足立区議選(定数45)は22日未明に開票結果が確定し、自民党が現有から5減の12議席に落ち込んだ。公明党が13人全員当選で第1会派になり、立憲民主党も現有を維持したが、前回2019年に比べていずれも得票を減らした。4月の統一地方選であらわになった自民などの「既成政党離れ」ともいえる流れがあらためて浮かんだ。
 受け皿となったのは日本維新の会で、立候補した3人全員が当選し、うち2人は3位と4位の上位につけた。今回から参戦したれいわ新選組、参政党も初めて議席を確保。投票率は42.79%(前回比0.1ポイント減)。

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